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水籠りに言はでふる屋の忍ぶ草
しのぶとだにも知らせてしかな

歌の意味
心に秘めたまま口に出さずに年を経てきた、古い家の軒に生える忍ぶ草のように、せめて忍んでいるということだけでも、あの人に知らせたいものだ。
鑑賞
巻第十一 恋歌一 655

詞書「権中納言俊忠家の歌合に、恋の歌とて詠める」
 藤原俊忠の家の歌合で恋の歌として詠んだ歌である。心に秘めて言わずに年を経た古屋の忍ぶ草のように、せめて忍んでいるということだけでも知らせたい、と詠む。上の三句は「しのぶ」を導く序詞で、荒れた古い家の軒に人知れず生える忍ぶ草に、言い出せないまま年月を重ねた恋心を重ねている。思いのすべては伝えられなくとも、忍んでいることだけは知ってほしいという控えめな願いである。
 作者の「藤原基俊」は右大臣藤原俊家の子である。官位には恵まれなかったが、歌壇の重鎮として源俊頼と並び称され、本集の撰者藤原俊成の師にあたる。
 本巻の第六百五十一首の「いはでの山に年を経て」と、言わずに年を経る忍ぶ恋を詠む点で共通する。

 初句「水籠りに」は、水の中に隠れるように、の意で、心の内に秘めて、の意を表す。
 二句「言はでふる屋の」の「ふる」は、言わずに年月を「経る」意と、「古屋」の「古」を掛ける。第六百五十一首の二句「いはでの山に」と、言わずにいる意が共通する。
 三句「忍ぶ草」はシダの一種で、古い家の軒などに生える。上三句が序詞となって四句の「しのぶ」を導く。
 四句「しのぶとだにも」の「しのぶ」は恋心を秘めて耐える意、「だに」は最小限の希望を表す副助詞で、せめて忍んでいるということだけでも、の意である。三句の「忍ぶ草」と同音を重ねる。
 結句「知らせてしかな」の「てしかな」は自己の願望を表す終助詞で、知らせたいものだ、の意である。

みこもり:水の中に隠れていること。転じて心に秘めること
ふる:年月を経る意と、古屋の古を掛ける
しのぶぐさ:シダの一種。古い家の軒などに生える
作者
藤原基俊
出典
千載和歌集
前の歌
岩間ゆく山の下水せきわびて 漏らす心のほどを知らなん
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思ふこと岩間に蒔きし松の種 千代と契らむ今はねさせよ