あさましや抑ふる袖の下くくる
涙の末を人や見つらん
- 歌の意味
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なんと情けないことだ。目に当てて押さえる袖の下をくぐって流れ出る涙の行く末を、人は見てしまっただろうか。
- 鑑賞
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巻第十一 恋歌一 693
詞書「摂政右大臣の時の百首歌に、忍恋の心を詠み侍りける」
本集撰集当時の摂政九条兼実がまだ右大臣であった時の百首歌で、「忍ぶ恋」の題により詠んだ歌である。あさましいことだ、押さえる袖の下をくぐって流れる涙の行く末を人は見ただろうか、と詠む。涙を袖で押さえて隠そうとしても、袖の下からくぐり出た涙が流れ、人目についたのではないかと狼狽する、忍ぶ恋の危うさを生々しく描いている。この百首歌は治承二年(1178)の右大臣家百首である。
作者の「前右京権大夫頼政」は源頼政である。兵庫頭源仲政の子で、右京権大夫を務めた武将、歌人である。のちに以仁王を奉じて平家打倒の兵を挙げ、宇治で敗死した。
次歌の第六百九十四首も同じ百首の「忍ぶ恋」の歌で、忍ぶ思いに反して表に現れる涙を詠む二首が並ぶ。
初句「あさましや」は、意外で情けないことだ、の意で、ここで句切れとなる。
二句「抑ふる袖の」は、涙を押さえる袖の、の意である。
三句「下くくる」の「くくる」は下をくぐって出る意で、袖の下をくぐって、の意である。
四句「涙の末を」の「末」は流れの行き着く先で、涙の行く末を、の意である。
結句「人や見つらん」の「や」は疑問の係助詞、「つ」は完了、「らん」は現在推量の助動詞「らむ」の連体形で、人は見てしまっただろうか、の意である。
くくる:下をくぐって出る
すゑ:流れの行き着く先
せつしやう:天皇に代わって政務を執る職
- 作者
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源頼政
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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いつしかと袖に時雨のそそくかな 思ひは冬の初めならねど
- 次の歌
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忍び音の袂は色に出でにけり 心にも似ぬ我が涙かな