恋ひわたる今日の涙に比ぶれば
昨日の袖は濡れしものかは
- 歌の意味
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恋し続けている今日流す涙に比べれば、昨日の袖は濡れていたといえるだろうか。いや、濡れてなどいなかった。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 717
詞書「逐日増恋といへる心を詠ませ給うける」
「逐日増恋」、すなわち日を追うごとにまさる恋という題で、院がお詠みになった歌である。恋し続ける今日の涙に比べれば、昨日の袖は濡れていたといえようか、と詠む。昨日もたしかに涙で濡れていたはずの袖が、今日の涙の多さの前では濡れていなかったも同然に思えるという誇張によって、日ごとに深まる恋を表している。
作者の「院御製」は、本集の撰進を命じた後白河院の詠んだ歌を示す。鳥羽天皇の第四皇子で、第七十七代の天皇として即位し、譲位後は長く院政を行った。今様を好み、「梁塵秘抄」を編んだ。
本巻の第七百十五首は本歌と同じ初句「恋ひわたる」で始まる。また結句の「ものかは」は第七百十三首の結句「濡るるものかは」と同じ反語の形で、海人の袖と比べた第七百十三首に対し、本歌は昨日の自分の袖と比べており、比べる尺度を変えて袖の濡れを詠む歌が並んでいる。
初句「恋ひわたる」は、恋し続ける、の意である。本巻の第七百十五首も同じ初句で始まる。
二句「今日の涙に」は、今日流す涙に、の意で、四句の「昨日の袖」と対をなす。
三句「比ぶれば」の「ば」は已然形に付いて、比べると、の意となる。
四句「昨日の袖は」は、昨日涙に濡れていた袖は、の意で、二句の「今日の涙」と今日と昨日の対比をなす。
結句「濡れしものかは」の「し」は過去の助動詞「き」の連体形、「ものかは」は反語で、濡れていたといえようか、いや濡れてはいなかった、の意である。第七百十三首の結句「濡るるものかは」と同じ反語の形をとる。
こひわたる:恋し続ける
- 作者
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後白河院
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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陸奥の十綱の橋に繰る綱の 絶えずも人に言ひわたるかな
- 次の歌
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朝まだき露をさながらささめ刈る 賤が袖だにかくは濡れじを