朝まだき露をさながらささめ刈る
賤が袖だにかくは濡れじを
- 歌の意味
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朝まだ早いうちに、露のついたままのささめを刈る身分の低い者の袖でさえ、これほどには濡れないだろうに。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 718
詞書「題しらず」
朝早く、露を置いたままのささめを刈る賤しい者の袖でさえ、これほどには濡れないだろうに、と詠む。朝露にまみれて草を刈る農夫の袖を引き合いに出し、それにもまさる恋の涙の多さを表している。
作者の「右おほいまうちきみ」は藤原実定である。右大臣藤原公能の子で、本集の撰集当時は右大臣であり、のちに左大臣に至って後徳大寺左大臣と呼ばれた。「おほいまうちきみ」は大臣を和語でいう呼び名である。小倉百人一首にも歌が採られている。
第七百十三首が海で藻を刈る海人の袖と比べたのに対し、本歌は野で草を刈る賤の袖と比べ、海と野とで対をなしている。第七百十七首から袖の濡れを比べる歌が続く。
初句「朝まだき」は、朝まだ早いうちに、の意である。
二句「露をさながら」の「さながら」は、そのまま、の意で、露を置いたままの、の意である。
三句「ささめ刈る」の「ささめ」は蓑や笠を編むのに用いた草である。第七百十三首の初句「玉藻刈る」と、刈る営みを詠む点で対応する。
四句「賤が袖だに」の「賤」は身分の低い者、「だに」は類推を表す副助詞で、賤しい者の袖でさえ、の意である。
結句「かくは濡れじを」の「じ」は打消し推量の助動詞、「を」は逆接の詠嘆を表す接続助詞で、これほどには濡れないだろうに、の意である。自分の袖の濡れようを言外に示す。
ささめ:蓑や笠を編むのに用いた草
しづ:身分の低い者
おほいまうちきみ:大臣の和語の呼び名
- 作者
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藤原実定
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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恋ひわたる今日の涙に比ぶれば 昨日の袖は濡れしものかは
- 次の歌
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潮垂るる伊勢をの海人や我ならん さらばみるめを刈るよしもがな