今はさは逢ひ見むまでは難くとも
命とならむ言の葉もがな
- 歌の意味
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今となってはもう、逢うところまではむずかしいとしても、せめて私の命の支えとなるような、あなたの言葉がほしいものだ。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 731
詞書「贈左大臣八条家にて恋の心を詠める」
贈左大臣藤原長実の八条の家で、恋の心を詠んだ歌である。今となってはもう、逢うことはむずかしくても、命の支えとなる言葉がほしい、と詠む。逢瀬はあきらめるとしても、せめて生きる力となる一言だけでも相手からほしいという、控えめながら切実な願いを表している。本文の詞書には「贈左大臣」の下に「長実」と注記があり、藤原長実を指すことを示している。長実は権中納言に至り、娘の美福門院得子が鳥羽天皇の后となったことから、死後に左大臣を贈られた。
作者の「左京大夫顕輔」は藤原顕輔である。修理大夫藤原顕季の子で、左京大夫を務め、崇徳院の命で詞花和歌集を撰んだ。六条藤家の歌学の基礎を築き、小倉百人一首にも歌が採られている。
本巻の第七百五十首も「言の葉」に身を変えて後の世に逢いたいと詠み、恋人の言葉に命や身を託す点で通い合う。
初句「今はさは」の「さは」は、それでは、の意で、今となってはもう、の意となる。
二句「逢ひ見むまでは」は、逢うところまでは、の意である。
三句「難くとも」の「とも」は逆接の仮定で、むずかしいとしても、の意である。
四句「命とならむ」の「む」は婉曲の助動詞で、命の支えとなるような、の意である。
結句「言の葉もがな」の「言の葉」は言葉、「もがな」は願望の終助詞で、言葉がほしいものだ、の意である。本巻の第七百五十首の二句「その言の葉に」と同じ語を用いる。
ことのは:言葉
- 作者
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藤原顕輔
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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恋ひ死なん身は惜しからず逢ふことに 代へんほどまでと思ふばかりぞ
- 次の歌
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一方になびく藻塩の煙かな つれなき人のかからましかば