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暮れにとも契りて誰か帰るらん
思ひ絶えたる曙の空

歌の意味
今夜の夕暮れにまた来ようと約束して、いったい誰が帰っていくのだろうか。私はもう思いを断ち切った、この夜明けの空のもとで。
鑑賞
巻第十二 恋歌二 749

詞書「題しらず」
 夕暮れにまたと約束して、誰が帰っていくのだろうか、思いを断ち切った曙の空よ、と詠む。夜明けに恋人と別れる人々は、また夕暮れに来ようと約束して帰っていくのだろうが、自分にはそのような約束もなく、望みを捨てたまま夜明けの空を眺めるばかりだという、孤独な恋の嘆きを表している。
 作者の「藤原家隆」は権中納言藤原光隆の子である。藤原俊成に和歌を学び、のちに新古今和歌集の撰者の一人となった。小倉百人一首にも歌が採られている。
 第七百四十六首が暮れの空を詠んだのに対し、本歌は曙の空を詠み、夕暮れと夜明けとが対をなしている。結句の体言止めの「空」は第七百四十六首の結句「暮れの空かな」と響き合い、「思ひ絶え」は第七百三十六首、第七百三十七首とも通う。

 初句「暮れにとも」は、夕暮れにまた、とでも、の意で、次の逢瀬の約束の言葉を示す。
 二句「契りて誰か」の「か」は疑問の係助詞で、三句の「らん」と係り結びをなす。約束して誰が、の意である。
 三句「帰るらん」の「らん」は現在推量の助動詞「らむ」の連体形で、二句の「か」の結びである。帰っていくのだろうか、の意である。ここで句切れとなる。
 四句「思ひ絶えたる」は、思いを断ち切った、の意で、恋人とのつながりを失い、望みを捨てた心をいう。第七百三十六首の結句「思ひ絶えなめ」、第七百三十七首の上の句「思ひも絶えなまし」と通う。
 結句「曙の空」は夜明けの空で、体言止めで結ぶ。第七百四十六首の結句「暮れの空かな」と、暮れと明けとで対をなす。

あけぼの:夜がほのぼのと明けはじめる頃
作者
藤原家隆
出典
千載和歌集
前の歌
磯隠れかきはやれども藻塩草 立ち来る波に現れやせん
次の歌
契り置くその言の葉に身を変へて 後の世にだに逢ひ見てしかな