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思ひきや夢をこの世の契りにて
覚むる別れを嘆くべしとは

歌の意味
思いもしなかった。夢で逢うことだけを、この世でのあの人との契りとして、夢から覚める時の別れを嘆かなければならないとは。
鑑賞
巻第十二 恋歌二 756

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 思っただろうか、夢をこの世の契りとして、覚める別れを嘆くことになろうとは、と詠む。現実には逢うことがかなわず、夢の中の逢瀬だけがこの世での二人の縁となり、目覚めるたびに別れを嘆かなければならないという、思いもよらなかった恋の境遇を嘆いている。
 作者の「俊恵法師」は源俊頼の子である。東大寺の僧で、白川の自坊を歌林苑と名付けて歌人たちを集め、歌会を催した。鴨長明の和歌の師である。小倉百人一首にも歌が採られている。
 本巻の巻末の第七百七十九首は本歌と同じ初句「思ひきや」で始まる。また第七百二十首も、夢で逢ったことと覚めた現とを詠み、夢と現をめぐる点で通い合う。

 初句「思ひきや」の「き」は過去の助動詞、「や」は反語で、思っただろうか、いや思いもしなかった、の意である。ここで句切れとなり、結句と倒置の関係にある。本巻の第七百七十九首も同じ初句で始まる。
 二句「夢をこの世の」は、夢を、この世での、の意である。
 三句「契りにて」の「契り」は男女の縁で、夢の逢瀬だけをこの世での縁として、の意である。
 四句「覚むる別れを」は、夢から覚める時の別れを、の意である。第七百二十首の四句「覚むる現も」と同じく、夢から覚めることを詠む。
 結句「嘆くべしとは」の「べし」は当然の助動詞で、嘆かなければならないとは、の意である。初句の「思ひきや」へ返る。

ちぎり:男女の縁。約束
作者
俊恵
出典
千載和歌集
前の歌
潮垂るる袖の干る間はありやとも あはでの浦の海人に問はばや
次の歌
我ゆゑの涙とこれをよそに見ば あはれなるべき袖の上かな