恋ひ恋ひて逢ふ嬉しさを包むべき
袖は涙に朽ち果てにけり
- 歌の意味
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恋しく思い続けて、ようやく逢えた嬉しさを包むはずの袖は、これまでの涙ですっかり朽ち果ててしまっていた。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌三 808
詞書「初逢恋の心を詠める」
「初逢恋」、すなわち初めて逢う恋という題で詠んだ歌である。恋い続けてようやく逢う嬉しさを包むはずの袖は、涙で朽ち果ててしまった、と詠む。古今集のよみ人しらずの歌「うれしきを何に包まむ唐衣袂ゆたかに裁てと言はましを」を踏まえ、嬉しさを包む袖がほしいという発想を受けながら、その袖は逢えずに流してきた長い間の涙ですでに朽ちてしまったと転じて、初めて逢えた喜びの陰にある、長い恋の苦しさを表している。
作者の「藤原公衡朝臣」は右大臣藤原公能の子である。後徳大寺左大臣藤原実定の弟で、歌人として知られた。
初句「恋ひ恋ひて」は、恋しく思い続けて、の意で、同じ語を重ねて長い恋の日々を示す。
二句「逢ふ嬉しさを」は、ようやく逢う嬉しさを、の意で、題の「初逢」を示す。
三句「包むべき」の「べき」は当然の助動詞「べし」の連体形で、包むはずの、の意である。古今集の「うれしきを何に包まむ」を踏まえる。
四句「袖は涙に」は、袖はこれまで流してきた涙で、の意である。
結句「朽ち果てにけり」の「朽ち果つ」はすっかり腐ってだめになる意、「に」は完了、「けり」は気づきの詠嘆で、朽ち果ててしまっていた、の意である。
くちはつ:すっかり腐ってだめになる
- 作者
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藤原公衡
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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難波江の葦のかりねのひとよゆゑ みをつくしてや恋ひわたるべき
- 次の歌
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君やそれありしつらさは誰なれば 恨みけるさへ今は悔しき