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いかにして夜の心を慰めむ
昼はながめにさても暮らしつ

歌の意味
どのようにして夜の心を慰めたらよいのだろう。昼は物思いにふけってぼんやりと眺めながら、それでもどうにか暮らしたのだが。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 840

詞書「題しらず」
 どのようにして夜の心を慰めようか、昼は物思いに眺め暮らしてどうにか過ごしたけれど、と詠む。昼はまだ物思いに沈んで外を眺めることで時を過ごせるが、恋しさのつのる夜はどうにも心のやり場がない、という恋の苦しさを、昼と夜の対比で表している。恋に悩む心が夜に深まるという、恋の歌の基本の情を率直に詠んだ一首である。
 作者の「和泉式部」は越前守大江雅致の娘である。和泉守橘道貞の妻となって小式部内侍を生み、のち為尊親王、敦道親王と恋愛関係を結んだ。上東門院彰子に仕え、情熱的な恋の歌で知られる。小倉百人一首にも歌が採られている。
 恋歌四の巻頭の一首である。巻末の第九百三首は「死ぬとても心を分くるものならば」と、死んでもなお恋しい人に心を残したいと詠む歌で、巻頭の本歌が夜の「心」の慰めがたさを嘆くのに対し、「心」の語で巻の始めと終わりが呼応している。

 初句「いかにして」はどのようにして、の意で、疑問を表す。三句の「慰めむ」と呼応して、手立てのない嘆きを示す。
 二句「夜の心を」は恋しさのつのる夜の心、の意である。四句の「昼」と対をなす。巻末の第九百三首の二句「心を分くる」と「心」の語で呼応する。
 三句「慰めむ」の「む」は意志、推量の助動詞で、どう慰めようか、の意である。ここで句切れとなる。
 四句「昼はながめに」の「ながめ」は物思いにふけってぼんやりと見やることである。二句の「夜」と「昼」で対比をなし、「は」が昼を取り立てて夜と区別している。
 結句「さても暮らしつ」の「さても」はそれでも、そのようにしてでも、の意である。「つ」は完了の助動詞で、昼はどうにか暮らし終えた、と言い切ることで、かえって夜の過ごしがたさを際立たせている。

ながめ:物思いにふけってぼんやりと見やること
なぐさむ:心を晴らす、気をまぎらす
作者
和泉式部
出典
千載和歌集
前の歌
忘るなよ世々の契りを菅原や ふしみの里の有明の空
次の歌
これもみなさぞな昔の契りぞと 思ふものからあさましきかな