木の間より領巾振る袖をよそに見て
いかがはすべき松浦佐用姫
- 歌の意味
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木の間から領巾を振る袖を遠くに見るばかりで、どうしたらよいのだろうか、松浦佐用姫よ。
- 鑑賞
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巻第十四 恋歌四 847
詞書「堀河院御時、百首歌たてまつりける時、恋の心を詠める」
堀河天皇の時代に奉った百首歌、いわゆる『堀河百首』で、恋の心を詠んだ歌である。木の間から領巾を振る袖をよそに見るばかりで、どうしたらよいのか、松浦佐用姫よ、と詠む。肥前国松浦の佐用姫が、任那へ渡る大伴狭手彦との別れを惜しんで山の上から領巾を振ったという伝説を踏まえ、恋しい人が遠くで袖を振るのを見るだけで近寄れないもどかしさを詠んでいる。
作者の「藤原基俊」は右大臣藤原俊家の子である。官位には恵まれなかったが、院政期の歌壇で源俊頼と並ぶ重鎮として歌合の判者などを務め、藤原俊成の師となった。小倉百人一首にも歌が採られている。
次歌の第八百四十八首も同じ百首歌の恋の歌で、堀河百首の歌が二首並ぶ。
初句「木の間より」は木々の間から、の意で、遠くから見通す視線を示す。
二句「領巾振る袖を」の「領巾」は古代の女性が肩に掛けた細長い布である。佐用姫が領巾を振って別れを惜しんだ伝説を踏まえる。
三句「よそに見て」は遠く離れた所から見るばかりで、の意である。近づくことのできない隔たりを表す。
四句「いかがはすべき」の「いかが」は疑問の副詞、「は」は強意の係助詞で、どうしたらよいのか、の意である。ここで句切れとなる。
結句「松浦佐用姫」は肥前国松浦に住んだという伝説の女性への呼びかけで、体言止めとなる。万葉集に見える佐用姫の伝説を背景に、遠く隔てられた恋の嘆きを重ねている。
ひれ:古代の女性が肩に掛けた細長い布
まつらさよひめ:肥前国松浦の伝説の女性で、別れゆく大伴狭手彦に山の上から領巾を振ったという
- 作者
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藤原基俊
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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竹の葉に玉貫く露にあらねども まだ夜をこめておきにけるかな
- 次の歌
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まぶしさす賤男の身にも堪へかねて 鳩吹く秋の声立てつなり