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恋をのみしかまの市に立つ民の
絶えぬ思ひに身をや替へてん

歌の意味
恋ばかりをして、飾磨の市に立って品物を交易する民のように、絶えることのない恋の思いと、この身を引き換えにしてしまうのだろうか。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 857

詞書は前の歌に続き「崇徳院に百首歌たてまつりける時、恋歌とて詠める」
 前歌と同じく『久安百首』の恋の歌である。恋ばかりをして、飾磨の市に立つ民のように、絶えない思いに身を替えてしまうのだろうか、と詠む。播磨国の飾磨の市で品物を交易する人々の姿に、恋の思いと引き換えに我が身を滅ぼしてしまいそうな自分を重ねている。市での交易を表す「替ふ」の語を生かして、恋に身を捧げる覚悟とも嘆きともつかない心を表している。
 作者の「皇太后宮大夫俊成」は権中納言藤原俊忠の子である。皇太后宮大夫を務め、のちに出家して釈阿と号した。後白河院の命を受けて本集を撰んだ。
 本歌から第八百六十首までは崇徳院に奉った久安百首の恋の歌が続き、一連をなしている。次歌の第八百五十八首も初句を「恋をのみ」で始め、地名に「し」「す」の音を掛けて続ける同じ形の歌で、二首が対をなしている。

 初句「恋をのみ」の「のみ」は限定の副助詞で、恋ばかりを、の意である。次歌の第八百五十八首の初句と同じである。
 二句「しかまの市に」の「しかま」は播磨国の地名飾磨で、その「し」に、恋をのみ「し」、すなわち恋ばかりをして、の意を掛ける。飾磨の市は古くから市の立った所である。
 三句「立つ民の」は市に立って交易をする人々の、の意である。「の」は比喩を表し、その民のように、の意となる。
 四句「絶えぬ思ひに」は絶えることのない恋の思いに、の意である。
 結句「身をや替へてん」の「替ふ」は引き換える意で、市の交易の縁語である。「や」は疑問の係助詞で、「てん」と連体形で結ぶ。「て」は完了の助動詞「つ」の未然形、「ん」は推量の助動詞で、身を引き換えてしまうのだろうか、の意となる。

しかま:播磨国の地名飾磨で、その「し」に、恋をのみ「し」の意を掛ける
かふ:引き換える、交易する
作者
藤原俊成
出典
千載和歌集
前の歌
東屋の小萱の軒の忍草 忍びもあへず茂る思ひに
次の歌
恋をのみすがたの池にみ草ゐて すまでやみなん名こそ惜しけれ