知らざりき雲居のよそに見し月の
影を袂に宿すべしとは
- 歌の意味
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知らなかった。雲の上の遠いよそのものとして見ていた月の光を、涙に濡れたこの袂に宿すことになろうとは。
- 鑑賞
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巻第十四 恋歌四 875
詞書「題しらず」
知らなかった、雲居のよそに見ていた月の光を、袂に宿すことになろうとは、と詠む。遠い雲の上のものとして眺めていた月の光が、涙に濡れた袂に映って宿るようになったと詠み、手の届かない存在であった人を恋い慕って涙に暮れるようになった身の上への驚きを表している。月を恋しい人の面影に重ね、袂の涙に映る月という美しい情景に恋の嘆きを託した一首である。
作者の「円位法師」は西行である。俗名は佐藤義清で、鳥羽院の北面の武士であったが、若くして出家し、諸国を旅しながら多くの歌を詠んだ。小倉百人一首にも歌が採られている。
初句「知らざりき」の「ざり」は打消の助動詞、「き」は過去の助動詞で、知らなかった、の意である。ここで句切れとなり、二句以下と倒置の関係にある。
二句「雲居のよそに」の「雲居」は雲のある遥かな空のことで、宮中をたとえる語でもある。「よそ」は自分とは関わりのない遠い所の意である。
三句「見し月の」の「し」は過去の助動詞「き」の連体形で、かつて見ていた月の、の意である。月を恋しい人にたとえている。
四句「影を袂に」の「影」は月の光のことで、恋しい人の面影を重ねる。「袂」は涙に濡れた袖を示す。
結句「宿すべしとは」の「宿す」は涙に月の光を映すことで、「べし」は当然、運命の助動詞である。宿すことになろうとは、の意で、初句の「知らざりき」に返って結ぶ。
くもゐ:雲のある遥かな空。宮中のたとえにも用いる
たもと:袖、特に袖の垂れ下がった部分
- 作者
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西行
- 出典
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千載和歌集
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葦の屋のかりそめぶしは津の国の ながらへゆけど忘れざりけり
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