逢ふと見しその夜の夢の覚めであれな
長き眠りは憂かるべけれど
- 歌の意味
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あの人に逢うと見たあの夜の夢が、覚めないままであってほしい。覚めることのない長い眠りはつらいものであろうけれども。
- 鑑賞
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巻第十四 恋歌四 876
詞書「題しらず」
逢うと見たその夜の夢が覚めないでいてほしい、長い眠りはつらいものであろうけれど、と詠む。夢の中でようやく恋しい人に逢えた喜びから、その夢から覚めずにいたいと願う一方、覚めない長い眠りとは死を意味し、それはつらいことであろうと思い返している。現実には逢えない恋の苦しさが、死をも辞さないほどの願いとなって表れている。
作者の「円位法師」は西行である。俗名は佐藤義清で、鳥羽院の北面の武士であったが、若くして出家し、諸国を旅しながら多くの歌を詠んだ。
本巻の第八百九十八首、第八百九十九首も夢の中での逢瀬を詠み、夢に慰めを求める恋の歌が巻中に配されている。
初句「逢ふと見し」は恋しい人に逢うと夢に見た、の意である。「し」は過去の助動詞「き」の連体形である。
二句「その夜の夢の」はあの夜に見た夢が、の意で、「の」は主格を示す。
三句「覚めであれな」の「で」は打消の接続助詞、「な」は願望の終助詞で、覚めないでいてほしい、の意である。ここで句切れとなる。
四句「長き眠りは」の「長き眠り」は覚めることのない眠り、すなわち死を暗示する。三句の夢から覚めないことを受けて、それを長い眠りと言い換えている。
結句「憂かるべけれど」の「べけれ」は推量の助動詞「べし」の已然形、「ど」は逆接の接続助詞で、つらいことであろうけれど、の意である。死を厭う思いと、それでも夢から覚めたくない思いとの葛藤を示して結ぶ。
ながきねぶり:覚めることのない眠りで、死のたとえ
- 作者
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西行
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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知らざりき雲居のよそに見し月の 影を袂に宿すべしとは
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秋風の憂き人よりもつらきかな 恋せよとては吹かざらめども