忘れぬや忍ぶやいかに逢はぬまの
形見と聞きし明け暮れの空
- 歌の意味
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忘れずにいるか、偲んでいるか、どうなのか。逢わない間の形見にしようと聞いた、あの明け暮れの空を。
- 鑑賞
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巻第十四 恋歌四 884
詞書「明け暮れの空を共に眺めける女、又逢ふまでの形見に見むと申しける後、つかはしける」
明け暮れの空を共に眺めた女が、また逢うまでの形見にその空を見ようと言ったのち、送った歌である。忘れずにいるか、偲んでいるか、どうなのか、逢わない間の形見と聞いた明け暮れの空を、と詠む。二人で眺めた空を、逢えない間の形見にしようと言った女の言葉を思い出し、その約束どおり今も空を見て自分を偲んでくれているのかと、相手の心を問いかけている。
作者の「右近中将忠良」は藤原忠良である。摂政藤原基実の子で、右近中将を務め、のちに公卿に列した。
本巻の第八百五十四首も形見を題材とし、別れたのちの形見となる手紙を詠んでいる。また第八百七十三首は「夕暮の空」、本歌は「明け暮れの空」と、ともに「空」で結んでいる。
初句「忘れぬや」の「や」は疑問の係助詞で、忘れずにいるか、の意である。
二句「忍ぶやいかに」の「忍ぶ」は偲ぶ、思い慕う意で、「いかに」はどうなのか、と問いかける語である。ここで句切れとなる。
三句「逢はぬまの」は逢わない間の、の意である。
四句「形見と聞きし」の「形見」は逢えない間に相手を思い出すよすがのことで、「し」は過去の助動詞「き」の連体形である。形見にしようと女の言うのを聞いた、の意となる。
結句「明け暮れの空」は体言止めで、朝夕の空を示す。初句、二句の問いかけの対象であり、倒置の形で結んでいる。本巻の第八百七十三首の結句「夕暮の空」と同じく「空」で結ぶ。
しのぶ:偲ぶ、思い慕う
あけくれ:明け方と夕暮れ、朝夕
- 作者
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藤原忠良
- 出典
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千載和歌集
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移り香に何染みにけん小夜衣 忘れぬつまとなりけるものを
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思ひかねなほ恋路にぞ帰りぬる 恨みは末も通らざりけり