見せばやな雄島の海人の袖だにも
濡れにぞ濡れし色は変はらず
- 歌の意味
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見せたいものだ、あの人に。雄島の漁師の袖でさえ、濡れに濡れはしても、色までは変わらないのに。私の袖は涙で色まで変わってしまった。
- 鑑賞
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巻第十四 恋歌四 886
詞書は前の歌に続き「歌合し侍りける時、恋歌とて詠める」
前歌と同じく歌合で、恋の歌として詠んだ歌である。見せたいものだ、雄島の海人の袖でさえ、濡れに濡れても色は変わらないのに、と詠む。毎日海に入って漁をする雄島の海人の袖でさえ、濡れはしても色は変わらないのに、私の袖は恋の涙で色まで変わってしまったと、言外に血の涙を流すほどの恋の苦しみを表している。「見せばやな」と初句で強く言い切り、その対象を言わずに暗示する構成が効果的な一首である。
作者の「殷富門院大輔」は藤原信成の娘である。後白河天皇の皇女である殷富門院亮子内親王に仕えた。多作の歌人として知られ、小倉百人一首にもこの歌が採られている。
本歌は、源重之の「松島や雄島の磯にあさりせし海人の袖こそかくは濡れしか」(後拾遺和歌集)を本歌とする。重之の歌が自分の袖の濡れ方を海人の袖にたとえたのに対し、本歌は海人の袖でさえ色は変わらないと、さらに一歩進めている。
前歌の第八百八十五首と同じ歌合の恋の歌である。本巻の第八百七十一首の初句「見せばやな」と同じ初句で始まり、また第八百九十三首は海人の袖と比べて自分の袖を詠む点で、本歌と趣向を同じくしている。
初句「見せばやな」の「ばや」は願望の終助詞、「な」は詠嘆の終助詞で、見せたいものだ、の意である。ここで句切れとなり、見せたい相手と対象は言外に示される。本巻の第八百七十一首の初句と同じである。
二句「雄島の海人の」の「雄島」は陸奥国松島の島の一つで、「海人」は漁師のことである。本歌の重之の歌にも詠まれた歌枕である。
三句「袖だにも」の「だに」は類推の副助詞で、海人の袖でさえ、の意である。言外に、まして私の袖は、の意を含む。
四句「濡れにぞ濡れし」は同じ動詞を重ねて強調する表現で、濡れに濡れた、の意である。「ぞ」は強意の係助詞で、「し」と連体形で結ぶ。
結句「色は変はらず」は色は変わらない、の意で、言外に、私の袖は血の涙で色まで変わってしまった、の意を含めて結ぶ。
をじま:陸奥国松島の島の一つ
あま:漁師
- 作者
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殷富門院大輔
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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思ひかねなほ恋路にぞ帰りぬる 恨みは末も通らざりけり
- 次の歌
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山城の美豆野の里に妹を置きて いくたび淀に舟呼ばふらん