ちはやぶる賀茂の社の神も聞け
君忘れずは我も忘れじ
- 歌の意味
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賀茂の社の神も聞いてほしい。あなたが私を忘れないならば、私もあなたを忘れまい。
- 鑑賞
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巻第十五 恋歌五 909
詞書「左大将朝光、誓言文を書きて、代はりおこせよと責め侍りければ、つかはしける」
左大将藤原朝光が、心変わりしないという誓いの文を書いて送り、その代わりにあなたも誓いの文をよこせと迫ったので、送った歌である。賀茂の社の神も聞いてほしい、あなたが忘れないならば私も忘れまい、と詠む。神を証人として誓いを立てながら、「君忘れずは」と条件をつけることで、自分が忘れないかどうかは相手の心次第であると切り返している。誓いを求められて応じつつ、主導権を相手に渡さない機知のある返しである。朝光は関白藤原兼通の子で、大納言、左大将を務めた。
作者の「馬内侍」は源時明の娘である。円融天皇の中宮媓子、一条天皇の中宮定子などに仕え、藤原朝光をはじめ多くの貴公子と交際した。中古三十六歌仙の一人である。
前歌の第九百八首の「忘るるは」を受けるように、本歌は「我も忘れじ」と誓い、忘れられる嘆きと忘れまいという誓いが並んでいる。
初句「ちはやぶる」は「神」にかかる枕詞で、ここでは二句の「賀茂の社」から三句の「神」へとかかる。
二句「賀茂の社の」は、京都の賀茂神社、すなわち上賀茂、下鴨の両社をいう。誓いの証人として神を呼び出している。
三句「神も聞け」の「聞け」は命令形で、神も聞いてくれ、の意である。「も」には、人だけでなく神も、という含みがある。ここで句切れとなる。
四句「君忘れずは」の「ずは」は打消しの助動詞「ず」に係助詞「は」が付いた仮定条件で、あなたが忘れないならば、の意である。前歌の第九百八首の初句「忘るるは」と応じる。
結句「我も忘れじ」の「じ」は打消しの意志の助動詞で、私も忘れまい、の意である。四句と対になり、誓いを相手の心に委ねる形で結ぶ。
ちかごとぶみ:神仏にかけて誓いを書いた文
おこす:よこす、送ってくる
せむ:迫る、催促する
- 作者
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馬内侍
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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忘るるは憂き世の常と思ふにも 身をやる方のなきぞわびぬる
- 次の歌
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疑ひし命ばかりはありながら 契りし中の絶えぬべきかな