狩人は咎めもやせん草しげみ
あやしき鳥の跡の乱れを
- 歌の意味
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狩人は見とがめはしないだろうか。草が茂っているので、そこにある怪しげな鳥の足跡の乱れを。
- 鑑賞
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巻第十五 恋歌五 911
詞書「もと知りて侍りける男の、異人にもの申すと聞きて文をつかはしたりければ、言ひつかはしける」
以前に関わりのあった男が、作者がほかの人と親しくしていると聞いて手紙をよこしたので、詠み送った歌と解される。狩人は見とがめはしないだろうか、草が茂っているので、怪しげな鳥の足跡の乱れを、と詠む。鳥の足跡は文字、筆跡をたとえる語で、男からの手紙を「あやしき鳥の跡」に、今の恋人を「狩人」に見立て、その手紙が今の人に見とがめられはしないかと案じる形で、相手の未練をやんわりとはねつけている。鳥の跡を文字とするのは、中国の蒼頡が鳥の足跡を見て文字を作ったという故事による。
作者の「相模」は源頼光の娘(養女とも)である。相模守大江公資の妻となったことからこの名で呼ばれ、のちに一条天皇の皇女脩子内親王に仕えた。小倉百人一首にも歌が採られている。
本巻の第九百五十首も「浜千鳥跡だに見せぬ」と、鳥の跡を手紙にたとえて詠む。
初句「狩人は」の「狩人」は鳥獣を狩る人で、ここでは今の恋人をたとえる。四句の「鳥」と縁語になる。
二句「咎めもやせん」の「咎む」は見とがめる、怪しむ意である。「や」は疑問の係助詞で、推量の助動詞「む」の連体形「ん」で結ぶ。見とがめはしないだろうか、の意である。ここで句切れとなり、三句以下と倒置の関係にある。
三句「草しげみ」は、形容詞「しげし」の語幹に「み」が付いて原因、理由を表す語法で、草が茂っているので、の意である。乱れた足跡の残る場を示す。
四句「あやしき鳥の」の「あやしき」は怪しい、不審な、の意である。「鳥」は結句の「跡」へと続いて文字を導き、男からの手紙をたとえる。
結句「跡の乱れを」の「跡」は足跡で、「鳥の跡」で筆跡、文字の意となる。「乱れ」は足跡の乱れに、筆跡の乱れや男の心の乱れを重ねる。本巻の第九百五十首の四句「跡だに見せぬ」と共通する。
とがむ:見とがめる、怪しむ
とりのあと:鳥の足跡。転じて文字、筆跡
ことひと:ほかの人
- 作者
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相模
- 出典
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千載和歌集
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疑ひし命ばかりはありながら 契りし中の絶えぬべきかな
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山よりも深き所を尋ね見ば 我が心にぞ人は入るべき