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かりにぞと言はぬ先より頼まれず
たち止まるべき心ならねば

歌の意味
狩りに行くのだ、仮初めのことだ、と言われる前から、あなたを頼みにすることはできなかった。立ち止まってくれるような心ではないのだから。
鑑賞
巻第十五 恋歌五 914

詞書「娘のもとに通ふ男の、狩りになんまかるとて、太刀を乞ひにおこせて侍りければ、娘に代はりてつかはしける」
 作者の娘のもとに通っていた男が、狩りに出かけるといって太刀を借りに使いをよこしたので、娘に代わって送った歌である。「かりに」と言われる前から頼みにはできなかった、立ち止まってくれるような心ではないのだから、と詠む。男の言う「狩りに」を「仮に」と取りなし、娘との仲も仮初めのものだと言われる前から当てにはしていなかったと皮肉り、求められた「太刀」を「立ち止まる」に掛けて、男の心がとどまらないことを恨んでいる。詞書の語をそのまま歌に取り込んだ、機知に富む代作である。
 作者の「赤染衛門」は赤染時用の娘である。実父は平兼盛ともいわれる。文章博士大江匡衡の妻となり、藤原道長の妻倫子とその娘の上東門院彰子に仕えた。小倉百人一首にも歌が採られている。
 本巻の第九百十三首と同じく、相手から届いた言葉や事柄を掛詞で取りなして切り返す贈答の歌である。

 初句「かりにぞと」の「かり」は、男の言う「狩り」と、仮初めの意の「仮」を掛ける。「ぞ」は強意の係助詞で、「と」で相手の言葉を引く。
 二句「言はぬ先より」は、言われる前から、の意である。
 三句「頼まれず」の「れ」は可能の助動詞「る」の未然形、「ず」は打消しの助動詞で、頼みにすることができない、の意である。ここで句切れとなり、四句以下と倒置の関係にある。
 四句「たち止まるべき」の「たち」は、詞書にある「太刀」と、「立ち止まる」の「立ち」を掛ける。「べき」は推量の助動詞「べし」の連体形である。
 結句「心ならねば」の「ね」は打消しの助動詞「ず」の已然形で、「ば」が付いて、心ではないのだから、の意となる。三句の理由を後から述べる倒置となっている。

かり:狩りの意と、仮初めの意の仮を掛ける
たち:太刀の意と、立ち止まるの立ちを掛ける
まかる:行く、出かける
こふ:求める、借りたいと頼む
作者
赤染衛門
出典
千載和歌集
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古も越え見てしかばあふさかは ふみたがふべき中の道かは
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人心何を頼みて水無瀬川 堰の古杭朽ち果てぬらん