知るなれば如何に枕の思ふらん
塵のみ積もる床の気色を
- 歌の意味
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枕は何もかも知っているというから、どのように思っていることだろう。恋人が訪れず、塵ばかりが積もっていく寝床のありさまを。
- 鑑賞
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巻第十五 恋歌五 920
詞書は前の歌に続き「百首歌たてまつりける時、恋の歌とて詠める」
前の二首と同じ百首歌の恋の歌である。枕は知っているというから、どう思っていることだろう、塵ばかり積もる床のありさまを、と詠む。枕は寝る人の秘め事を知るものとされたことから、その枕を人に見立て、恋人の訪れが絶えて共寝もなく、塵だけが積もっていく寝床を、枕はどんな思いで見ているだろうかと詠んで、独り寝の寂しさを表している。
作者の「前参議親隆」は藤原親隆である。藤原為房の子で、参議に至った。久安百首の作者の一人である。
本巻の第九百四十二首「しきしのぶ床だに堪へぬ涙にも」も床を詠むが、本歌の床が塵の積もる乾いたさまであるのに対し、第九百四十二首は涙に堪えない床を詠み、乾いた床と濡れた床が対をなしている。
初句「知るなれば」の「なれ」は伝聞の助動詞「なり」の已然形で、「ば」が付いて、知っているというから、の意となる。枕は恋の秘め事を知るものという言い伝えを踏まえる。
二句「如何に枕の」は、どのように枕が、の意で、枕を人に見立てている。
三句「思ふらん」の「らん」は現在推量の助動詞「らむ」で、思っていることだろう、の意である。ここで句切れとなり、四句以下と倒置の関係にある。
四句「塵のみ積もる」は、共寝がなく使われない床に塵ばかりが積もる、の意で、恋人の訪れの絶えたことを示す。
結句「床の気色を」の「床」は寝床、「気色」は様子、ありさまの意である。本巻の第九百四十二首の二句「床だに堪へぬ」と「床」の語を共有する。
とこ:寝床
けしき:様子、ありさま
- 作者
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藤原親隆
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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憂かりける世々の契りを思ふにも つらきは今の心のみかは
- 次の歌
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はかなくも来む世をかねて契るかな 再び同じ身ともならじを