君恋ふる心の闇をわびつつは
この世ばかりと思はましかば
- 歌の意味
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あなたを恋い慕う心の闇に思い悩みながらも、それがこの世だけのことだと思えるのならば、まだしもよいのに。
- 鑑賞
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巻第十五 恋歌五 925
詞書「題しらず」
あなたを恋う心の闇を嘆きながらも、それをこの世だけのことと思えたならば、と詠む。恋に迷う心の闇は、来世の成仏をも妨げる迷いになると考えられていた。この苦しみがこの世だけで終わるのならまだ耐えられるのに、来世までも続くのであろうと、結句を言いさして嘆きの深さを余韻に残している。
作者の「二条院讃岐」は源頼政の娘である。二条天皇に仕え、のちに後鳥羽天皇の中宮宜秋門院任子に仕えた。小倉百人一首にも歌が採られている。
本巻の第九百四首の「この世にまたは」、第九百五十一首の「この世に人を」と「この世」の語を共有する。また第九百二十一首、第九百三十四首が来世までの契りのはかなさを詠むのに対し、本歌は恋の迷いが来世まで続くことを恐れて詠み、同じ来世を逆の方向から見ている。
初句「君恋ふる」は、あなたを恋い慕う、の意である。前歌の第九百二十四首の初句「君恋ふと」と同じ詠み出しである。
二句「心の闇を」の「心の闇」は、恋や子への愛などのために分別を失い、思い迷う心をいう。来世の成仏を妨げる迷いの意を含む。
三句「わびつつは」の「わぶ」は思い悩む意、「つつ」は継続の接続助詞で、思い悩みながらも、の意である。
四句「この世ばかりと」の「ばかり」は限定の副助詞で、この世だけのことと、の意である。本巻の第九百四首の四句「この世にまたは」と「この世」の語を共有する。
結句「思はましかば」の「ましか」は反実仮想の助動詞「まし」の未然形で、「ば」が付いて、思えるのならば、の意となる。後に続く、どんなにかよかろうに、の意を言いさしている。
こころのやみ:分別を失って思い迷う心
わぶ:思い悩む、つらく思う
- 作者
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二条院讃岐
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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君恋ふと浮きぬる魂のさ夜更けて いかなるつまに結ばれぬらん
- 次の歌
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変はりゆく気色を見ても生ける身の 命をあだに思ひけるかな