しきしのぶ床だに堪へぬ涙にも
恋は朽ちせぬものにぞありける
- 歌の意味
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独り寝の床に衣を敷き、しきりに恋しい人を偲ぶ。その床さえも堪えきれずに朽ちてしまうほどの涙にも、恋は朽ちることのないものであったのだ。
- 鑑賞
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巻第十五 恋歌五 942
詞書は前の歌に続き「百首歌召しける時、恋の歌とて詠ませ給うける」
前の四首と同じ百首歌の恋の歌である。敷いて偲ぶ床さえ堪えきれない涙にも、恋は朽ちないものであったのだ、と詠む。独り寝の床で恋しい人を偲んで流す涙は、床さえも堪えきれず朽ちてしまうほどであるのに、その涙にも恋の思いだけは朽ちることがなかったと気づき、尽きることのない恋の思いを詠んでいる。
作者の「皇太后宮大夫俊成」は権中納言藤原俊忠の子である。皇太后宮大夫を務め、のちに出家して釈阿と号した。後白河院の命を受けて本集を撰んだ。
本巻の第九百二十首は塵の積もる乾いた床を詠み、本歌は涙に堪えない床を詠んで、対をなしている。また第九百五首、第九百四十首が涙に袖の朽ちることを詠むのに対し、本歌は床さえ朽ちるほどの涙にも恋だけは朽ちないと詠んでいる。
初句「しきしのぶ」の「しき」は、床に衣を「敷き」と、しきりに繰り返す意の「頻き」を掛け、恋しい人を偲ぶ、の意である。
二句「床だに堪へぬ」の「だに」は副助詞で、床でさえも、の意である。「堪へぬ」は堪えきれない、の意で、床さえも朽ちてしまうほどの涙をいう。本巻の第九百二十首の結句「床の気色を」と「床」の語を共有する。
三句「涙にも」は、そのような涙にも、の意である。前の第九百三十九首「涙かな」、第九百四十首「落つる涙か」に続いて涙を詠む。
四句「恋は朽ちせぬ」の「朽ちせ」は朽ちる意の「朽ちす」の未然形、「ぬ」は打消しの助動詞「ず」の連体形で、恋は朽ちることのない、の意である。二句で床さえ朽ちることを示し、それと対比させている。
結句「ものにぞありける」の「ぞ」は強意の係助詞で、「ける」の連体形で結ぶ。「ける」は気づきの詠嘆で、ものであったのだ、の意である。
しく:床に衣を敷く意と、しきりに繰り返す意の頻くを掛ける
しのぶ:恋い慕う、思い慕う
くちす:朽ちる
- 作者
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藤原俊成
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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奥山の岩垣沼のうきぬなは 深きこひぢに何乱れけん
- 次の歌
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朝夕にみるめをかづく海人だにも うらみは絶えぬものとこそ聞け