なほざりのそら頼めとて待ちし夜の
苦しかりしぞ今は恋しき
- 歌の意味
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いい加減な空約束だとわかっていながら、それでも待ち続けた夜の苦しかったことが、今となっては恋しく思われる。
- 鑑賞
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巻第十五 恋歌五 945
詞書「恋歌とて詠める」
恋の歌として詠んだものである。なおざりの空頼めと知りつつ待った夜の苦しかったことが、今は恋しい、と詠む。かつては相手のいい加減な約束を当てにして待ち続け、来ない人を待つ夜はつらく苦しかったが、相手の訪れが絶えた今となっては、その待つ苦しささえも恋しく思われると、失った恋への未練を詠んでいる。
作者の「殷富門院大輔」は藤原信成の娘である。後白河天皇の皇女殷富門院亮子内親王に仕えた女房歌人で、多作の歌人として知られる。小倉百人一首にも歌が採られている。
前歌の第九百四十四首と二句「そら頼めとて」を共有する。前歌が空頼めを恨んだことを悔やみ、本歌は空頼めに苦しんだ夜が今は恋しいと詠み、ともに空頼めの頃を今から振り返る二首となっている。
初句「なほざりの」の「なほざり」はいい加減なこと、本気でないことをいう。
二句「そら頼めとて」の「そら頼め」は当てにならない約束、「とて」は、と知りながら、の意である。前歌の第九百四十四首の二句と同じ句である。
三句「待ちし夜の」の「し」は過去の助動詞「き」の連体形で、待った夜の、の意である。
四句「苦しかりしぞ」の「苦しかり」は形容詞「苦し」の連用形、「し」は過去の助動詞「き」の連体形で、苦しかったことが、の意である。「ぞ」は強意の係助詞で、結句の「恋しき」と連体形で結ぶ。
結句「今は恋しき」の「恋しき」は形容詞「恋し」の連体形で、四句の「ぞ」を受けて結ぶ。四句の「苦し」と結句の「恋し」、過去の夜と「今」を対比させ、苦しかった過去が今は恋しいという逆転を表す。前歌の第九百四十四首の「思ひ絶えたる暮れ」と同じく、待つことさえなくなった今を詠む。
なほざり:いい加減なこと、本気でないこと
そらだのめ:当てにならない約束、むなしい期待
- 作者
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殷富門院大輔
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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何せんにそら頼めとて恨みけん 思ひ絶えたる暮れもありけり
- 次の歌
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惜しみかねげに言ひ知らぬ別れかな 月も今はの有明の空