古典和歌stream

笹の葉に霰降る夜の寒けきに
ひとりは寝なん物とやは思ふ

歌の意味
笹の葉に霰が降りかかる夜の寒さの中で、私が独りで寝ていられるものと、あなたは思うのだろうか。いや、とても独りでは寝られない。
鑑賞
巻第十五 恋歌五 957

詞書「題しらず」
 笹の葉に霰の降る夜の寒いのに、独りで寝ていられるものと思うだろうか、と詠む。笹の葉を打つ霰の音が響く冬の寒い夜に、とても独り寝などしていられないと訴え、相手の訪れを促している。冬の夜の霰の音という具体的な景物によって、独り寝の寒さとわびしさを鮮やかに伝えている。
 作者の「馬内侍」は源時明の娘である。円融天皇の中宮媓子、一条天皇の中宮定子などに仕え、藤原朝光をはじめ多くの貴公子と交際した。中古三十六歌仙の一人である。
 前歌の第九百五十六首の「ささめ刈る」に続き、本歌は「笹の葉に」と詠み出して、同じ音で始まる歌が並ぶ。また本巻の第九百五十二首「ひとり寝覚めの枕にぞ知る」が秋の夜の独り寝を詠むのに対し、本歌は冬の夜の独り寝を詠んでいる。

 初句「笹の葉に」は、笹の葉の上に、の意である。前歌の第九百五十六首の初句「ささめ刈る」と「ささ」の音で応じる。
 二句「霰降る夜の」は、霰の降る冬の夜の、の意で、笹の葉を打つ霰の音を思わせる。
 三句「寒けきに」の「寒けき」は形容詞「寒けし」の連体形で、寒いのに、の意である。
 四句「ひとりは寝なん」の「な」は完了(強意)の助動詞「ぬ」の未然形、「ん」は推量の助動詞「む」の連体形で、独りで寝ていられよう、の意である。本巻の第九百五十二首の四句「ひとり寝覚めの」と、独り寝を詠む点で通う。
 結句「物とやは思ふ」の「やは」は反語の係助詞で、「思ふ」の連体形で結ぶ。思うだろうか、いや独りでは寝られない、の意である。

ささ:笹、丈の低い竹の類
あられ:空から降る小さな氷の粒
作者
馬内侍
出典
千載和歌集
前の歌
ささめ刈る荒田の沢に立つ田民も 身のためにこそ袖は濡るらめ
次の歌
恨むべき心ばかりはあるものを なきになしても訪はぬ君かな