ちはやぶる斎の宮の旅寝には
あふひぞ草の枕なりけり
- 歌の意味
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斎院の宮のそばでの旅寝では、逢う日を思わせる葵こそが、草の枕であったよ。
- 鑑賞
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巻第十六 雑歌上 970
詞書「祭の使にて、神館の宿所より斎院の女房に遣はしける」
賀茂祭の勅使として下向した際、神館の宿所から斎院の女房に送った歌である。斎院のそばでの旅寝では、葵こそが草の枕であった、と詠む。賀茂祭に欠かせない葵を旅寝の草枕に見立て、その「あふひ」に「逢ふ日」を掛けて、斎院の女房に逢える日を待つ思いをほのめかしている。
作者の「藤原実方朝臣」は藤原定時の子である。叔父の藤原済時の養子となり、左近衛中将に至ったが、のちに陸奥守として下向し、任地で没した。中古三十六歌仙の一人で、小倉百人一首にも歌が採られている。
本巻の第九百六十八首、第九百六十九首に続き、賀茂の斎院にまつわる歌が並ぶ。前歌が御禊の賀茂川を詠むのに対し、本歌は賀茂祭の葵を詠んでいる。
初句「ちはやぶる」は「神」にかかる枕詞で、ここでは神に仕える斎の宮を導いている。
二句「斎の宮の」は、賀茂の斎院の、の意である。
三句「旅寝には」は、家を離れて泊まることで、祭の使として神館に泊まっていることを指す。
四句「あふひぞ草の」の「あふひ」は、賀茂祭に用いる葵の意と、逢う日の意を掛ける掛詞である。「ぞ」は強意の係助詞である。
結句「枕なりけり」の「けり」は気づきの詠嘆を表す助動詞で、枕であったよ、の意である。四句の「ぞ」を受ける結びは本来連体形の「ける」となるところである。
まつりのつかひ:賀茂祭に朝廷から遣わされる勅使
かんだち:神事に奉仕する人の宿所
いつきのみや:賀茂の斎院
くさのまくら:旅寝、草を結んで作る枕
あふひ:葵の意と、逢う日の意を掛ける
- 作者
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藤原実方
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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禊せし賀茂の川波立ちかへり はやく見し瀬に袖は濡れきや
- 次の歌
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薫る香によそふるよりはほととぎす 聞かばや同じ声やしたると