ささなみや国つ御神のうらさびて
古き都に月ひとりすむ
- 歌の意味
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ささなみの地を治める国つ神の心も荒れすさんで、古い都には月だけがひとり澄んだ光を投げて住んでいる。
- 鑑賞
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巻第十六 雑歌上 981
詞書「月の歌あまた詠ませ侍りける時、詠み侍りける」
月の歌を多く詠ませた時に自ら詠んだ歌である。ささなみの地の国つ神の心も荒れすさんで、古い都には月だけがひとり澄み、住んでいる、と詠む。荒れ果てた近江の古い都を、ただ月だけが変わらず照らす光景を描き、栄華のはかなさと月の永遠を対比している。
作者の「法性寺入道前太政大臣」は藤原忠通である。藤原忠実の子で、鳥羽、崇徳、近衛、後白河の四代にわたって摂政、関白をつとめ、太政大臣にのぼった。晩年に出家して法性寺に住んだ。小倉百人一首にも歌が採られている。
本歌は、『万葉集』の高市古人の「楽浪の国つ御神のうらさびて荒れたる京見れば悲しも」を本歌とし、初句から三句までをほぼそのまま取っている。本歌の「月ひとり」に対し、次歌の第九百八十二首は「月はひとつ」と詠み、一つの月をめぐる趣向が並ぶ。
初句「ささなみや」は、琵琶湖の南西岸一帯の古い呼び名で、「や」は詠嘆の間投助詞である。
二句「国つ御神の」は、その土地を治める神の、の意である。
三句「うらさびて」の「うら」は心の意で、心が荒れすさんで、の意である。本歌の三句をそのまま取っている。
四句「古き都に」は、天智天皇の大津の宮のあった、近江の荒れた旧都を指す。
結句「月ひとりすむ」の「すむ」は、月が澄む意と住む意を掛ける掛詞である。人のいない旧都に月だけがひとり住む、の意となる。次歌の第九百八十二首の初句から三句の「月はひとつにて」と応じる。
ささなみ:琵琶湖の南西岸一帯の古い呼び名
くにつみかみ:その土地を治める神
うらさぶ:心が荒れすさむ、心さびしく思う
すむ:月が澄む意と、住む意を掛ける
- 作者
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藤原忠通
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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訪ふ人に思ひよそへて見る月の 曇るは帰る心地こそすれ
- 次の歌
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天の川空行く月は一つにて 宿らぬ水のいかでなからん