古典和歌stream

ながめつつ昔も月は見しものを
かくやは袖のひまなかるべき

歌の意味
もの思いにふけりながら、昔も月は見ていたのに、これほど袖の涙の乾く暇がないことがあっただろうか、いやなかった。
鑑賞
巻第十六 雑歌上 985

詞書「題しらず」
 もの思いにふけりながら昔も月は見ていたのに、これほど袖の涙の乾く暇がなかっただろうか、と詠む。昔も同じように月を眺めていたが、今ほど涙に暮れることはなかったと、昔と今を比べて、今の嘆きの深さを訴えている。
 作者の「相模」は源頼光の娘とされる。相模守大江公資の妻となったことからこの名がある。一品宮脩子内親王に仕えた。中古三十六歌仙の一人で、小倉百人一首にも歌が採られている。
 前歌の第九百八十四首が今夜の月を見る物思いを詠むのに対し、本歌は昔の月と今の月を比べて物思いの深まりを詠む。

 初句「ながめつつ」の「つつ」は反復継続の接続助詞で、もの思いにふけって眺めながら、の意である。
 二句「昔も月は」は、昔も月は、の意で、今と昔を比べている。
 三句「見しものを」の「し」は過去の助動詞「き」の連体形、「ものを」は逆接の接続助詞で、見ていたのに、の意である。
 四句「かくやは袖の」の「かく」は、このように、の意、「やは」は反語の係助詞で、結句の「べき」で結ぶ。
 結句「ひまなかるべき」の「ひま」は、涙の乾く間の意で、「べき」は推量の助動詞「べし」の連体形である。これほど涙の乾く暇がないことがあっただろうか、の意となる。

ひま:すきま、絶え間
ながむ:もの思いにふけりながらぼんやりと見やる
作者
相模
出典
千載和歌集
前の歌
物思はぬ人もや今宵ながむらん 寝られぬままに月を見るかな
次の歌
ひとりのみあはれなるかと我ならぬ 人に今宵の月を見せばや