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ひとりのみあはれなるかと我ならぬ
人に今宵の月を見せばや

歌の意味
私ひとりだけがしみじみと心を動かされるのかどうか確かめようと、私ではないほかの人にも今夜の月を見せたいものだ。
鑑賞
巻第十六 雑歌上 986

詞書「題しらず」
 私ひとりだけがしみじみと感じるのかと、私ではない人にも今夜の月を見せたいものだ、と詠む。今夜の月のあまりの美しさに、この感動は自分だけのものなのか、ほかの人も同じように感じるのか確かめたいという思いを詠み、感動を分かち合いたい心を率直に表している。
 作者の「和泉式部」は越前守大江雅致の娘である。和泉守橘道貞の妻となって小式部内侍を生み、のち為尊親王、敦道親王と恋愛関係を結んだ。上東門院彰子に仕え、情熱的な恋の歌で知られる。
 本巻の第九百八十三首の「ひとりゐて」がひとりで月に向かう物思いを詠むのに対し、本歌は「ひとりのみ」の感動を人と分かち合いたいと詠み、ひとりの月をめぐって閉じる心と開く心が対をなしている。また前歌の第九百八十五首とともに、題しらずの女流歌人の月の歌が続く。

 初句「ひとりのみ」は、私ひとりだけが、の意である。本巻の第九百八十三首の初句「ひとりゐて」と応じる。
 二句「あはれなるかと」の「あはれなり」は、しみじみと心を動かされる意で、「か」は疑問の係助詞である。
 三句「我ならぬ」は、私ではない、の意である。
 四句「人に今宵の」は、ほかの人に今夜の、の意である。
 結句「月を見せばや」の「ばや」は願望の終助詞で、月を見せたいものだ、の意である。

あはれなり:しみじみと心を動かされるさま
作者
和泉式部
出典
千載和歌集
前の歌
ながめつつ昔も月は見しものを かくやは袖のひまなかるべき
次の歌
かくばかり憂き世の中の思ひ出でに 見よとも澄める夜半の月かな