- 歌の意味
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筏を流し下す清滝川に澄んで映る月は、棹にさわることのない氷であったよ。
- 鑑賞
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巻第十六 雑歌上 991
詞書「月の歌十首詠み侍りける時、詠める」
月の歌を十首詠んだ時の歌である。筏を流し下す清滝川に澄んで映る月は、棹にさわらない氷であった、と詠む。川面に白く冴えて映る月を氷に見立てつつ、筏の棹がその上を突いても少しも妨げにならないことに気づき、見立てを生かしながら機知を添えている。
作者の「俊恵法師」は源俊頼の子である。東大寺の僧となり、京の白川の自坊を歌林苑と名づけて歌人たちを集めた。鴨長明の師で、小倉百人一首にも歌が採られている。
前歌の第九百九十首が海辺の月を詠むのに対し、本歌は山あいの川の月を詠む。また本巻の第九百八十九首が月の光を雪に見立てたのに対し、本歌は水に映る月を氷に見立て、冬の景物による月の見立てが並んでいる。
初句「筏下ろす」は、木材を組んだ筏を川に流し下す、の意で、六音の字余りである。
二句「清滝川に」は、京の嵯峨の北を流れる清滝川で、筏流しの行われた川である。
三句「澄む月は」は、川面に澄んで映る月は、の意である。次歌の第九百九十二首の二句「澄めるけしきは」と、月の澄むことを詠む点で通う。
四句「棹にさはらぬ」の「さはる」は、触れる、妨げとなる意で、筏の棹にさわることのない、の意である。
結句「氷なりけり」の「けり」は気づきの詠嘆で、氷であったよ、の意である。本巻の第九百八十九首の結句「雪降りにけり」の雪の見立てと対をなす。
いかだ:木材を組んで川に流すもの
さを:舟や筏を進めるための長い竿
きよたきがは:京の嵯峨の北を流れる川、歌枕
さはる:触れる、妨げになる
- 作者
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俊恵
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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さ夜千鳥ふけひの浦におとづれて 絵島が磯に月傾きぬ
- 次の歌
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天の原澄めるけしきはのどかにて 早くも月の西へ行くかな