真木の戸を深山おろしに叩かれて
訪ふにつけても濡るる袖かな
- 歌の意味
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真木の戸を深山おろしの風に叩かれて、人が訪ねて来たのかと思うにつけても、涙に濡れる袖であることだ。
- 鑑賞
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巻第十七 雑歌中 1090
詞書「田上の山里に住み侍りける頃、風激しかりける夜詠める」
田上の山里に住んでいたころ、風の激しかった夜に詠んだ歌である。真木の戸を深山おろしに叩かれて、訪れがあるかと思うにつけても濡れる袖であることだ、と詠む。山から吹き下ろす激しい風が戸を叩く音は、人が訪ねて来て戸を叩く音のように聞こえる。けれども実際には誰も来ないので、そのたびに寂しさがつのり、涙で袖が濡れると、山里の夜の孤独を詠んでいる。
作者の「源俊頼朝臣」は源経信の子である。白河院の命で『金葉和歌集』を撰び、新しい趣向に富む歌風で知られた。
前歌の第千八十九首は作者の子の源俊重の歌で、父子の歌が並べられている。また本巻の第千九十八首が、板間の風に寝覚めして谷の嵐を思いやると詠むのと、山里の激しい風を詠む点で通う。
初句「真木の戸を」の「真木」は杉や檜などの良材で、それで作った板戸を言う。
二句「深山おろしに」は、深い山から吹き下ろす風に、の意である。
三句「叩かれて」は、戸を叩かれて、の意で、風の音を人が戸を叩く音に見立てている。
四句「訪ふにつけても」は、人が訪ねて来たかと思うにつけても、の意である。
結句「濡るる袖かな」は、涙に濡れる袖であることだ、の意で、「かな」は詠嘆の終助詞である。
まき:杉や檜などの良材
みやまおろし:深い山から吹き下ろす風
たなかみ:近江国の地名
- 作者
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源俊頼
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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いかにせむ伊勢の浜荻みがくれて 思はぬ磯の波に朽ちなば
- 次の歌
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をやま国の庵に焚く火のありなしに 立つ煙もや雲となるらん