命あらばいかさまにせん世を知らぬ
虫だに秋は鳴きにこそ鳴け
- 歌の意味
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このまま生きながらえたならば、私はどうしたらよいのだろうか。世の中の憂さを知らない虫でさえ、秋にはひたすらに鳴いているというのに。
- 鑑賞
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巻第十七 雑歌中 1095
詞書「題知らず」
命があるならばどうしたらよいだろうか、世を知らない虫でさえ秋にはひたすら鳴いているのに、と詠む。世の中の憂さを知らない虫でさえ、秋になれば声を限りに鳴いている。まして世のつらさを知り尽くした自分が生きながらえるならば、どれほど泣いて過ごさねばならないだろうかと、虫の声に自らの涙を重ねて、生きることのつらさを嘆いている。
作者の「和泉式部」は越前守大江雅致の娘である。和泉守橘道貞の妻となったことから、この名で呼ばれる。上東門院彰子に仕え、情熱的な恋の歌で知られる。
本巻の第千九十三首と秋の「虫」を共有する。第千九十三首が虫の声が絶えることに命の終わりをたとえるのに対し、本歌は命あるかぎり鳴き続ける虫に生きるつらさを重ね、対照をなしている。
初句「命あらば」は、このまま生きながらえるならば、の意である。
二句「いかさまにせん」は、どのようにしたらよいだろうか、の意である。ここで句切れとなる。
三句「世を知らぬ」は、世の中の憂さを知らない、の意である。
四句「虫だに秋は」の「だに」は、軽いものを挙げて重いものを類推させる副助詞で、虫でさえ、の意である。本巻の第千九十三首の二句「枯野の虫の」と秋の虫を共有する。
結句「鳴きにこそ鳴け」は、同じ動詞を重ねて、ひたすら鳴く、の意を強める。「こそ」は強意の係助詞で、已然形の「鳴け」で結ぶ係り結びである。「鳴く」に「泣く」を響かせている。
よ:世の中、またその憂さ
- 作者
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和泉式部
- 出典
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千載和歌集
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この世にはすむべきほどやつきぬらん 世の常ならず物の悲しき
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数ならで心に身をばまかせねど 身に従ふは心なりけり