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慕ひ来る恋の奴の旅にても
身の癖なれや夕轟きは

歌の意味
慕ってどこまでもついて来る恋という下男のせいで、旅先にあってもなお、身にしみついた癖なのだろうか、夕暮れになると胸が騒ぐのは。
鑑賞
巻第十八 雑歌下 1192

詞書「旅の恋」
 旅の恋を詠んだ歌である。慕ってついて来る恋の奴によって、旅先でも身の癖なのだろうか、夕暮れの胸騒ぎは、と詠む。恋心を、主人を慕ってどこまでもついて来る下男にたとえ、旅に出てもなお恋の思いが離れず、夕暮れになると恋人を思う胸の高鳴りが起こるのを、身に付いた癖かと戯れている。「恋の奴」という俗な言い方を用いたところに誹諧の趣がある。
 作者の「源俊頼朝臣」は大納言源経信の子である。堀河院の歌壇で活躍し、白河院の命により『金葉和歌集』を撰進した。
 誹諧歌の一連の十三首目である。

 初句「慕ひ来る」は、慕ってあとからついて来る、の意である。
 二句「恋の奴の」の「奴」は召し使いの男で、恋心を、どこまでも慕ってついて来る下男にたとえている。『万葉集』にも「恋の奴」の言い方が見える。
 三句「旅にても」は、旅先にあっても、の意である。
 四句「身の癖なれや」の「なれや」は断定の助動詞「なり」の已然形に疑問の係助詞「や」が付いた形で、身の癖なのだろうか、の意である。
 結句「夕轟きは」の「夕轟き」は、夕暮れに恋しい人を思って胸がどきどきすることで、四句との倒置となっている。

やつこ:召し使いの男、下男
ゆふとどろき:夕暮れに恋しさで胸が騒ぐこと
作者
源俊頼
出典
千載和歌集
前の歌
笛竹のあなあさましのよの中や ありしやふしの限りなるらん
次の歌
逢ふことのなげきの積もる苦しさを 負へかし人のこりはつるまで