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八橋のわたりに今日も泊まるかな
ここに住むべき身かはと思へど

歌の意味
八橋のあたりに、今日も泊まることだ。ここに住みつくような身であろうか、いやそうではないと思うけれど。
鑑賞
巻第十八 雑歌下 1197

詞書「東の方にまかりけるに、八橋にて詠める」
 東国へ下った折、八橋で詠んだ歌である。八橋のあたりに今日も泊まることだ、ここに住むべき身であろうかと思うけれど、と詠む。八橋は、『伊勢物語』の東下りで、男がかきつばたを詠み込んで都の妻を思う歌を詠んだことで名高い地である。本歌は、その地に住むつもりもないのに今日も足止めされて泊まる身を、自嘲して詠んでいる。
 作者の「道因法師」は藤原清孝の子である。俗名を敦頼といい、老年に至るまで和歌に熱心に打ち込んだことで知られる。
 誹諧歌の一連の十八首目である。

 初句「八橋の」の「八橋」は三河国の地名で、『伊勢物語』の東下りの段で知られる。
 二句「わたりに今日も」の「わたり」は、あたり、の意に、橋を渡る意の「渡り」を掛けている。
 三句「泊まるかな」の「かな」は詠嘆の終助詞で、ここで句切れとなる。
 四句「ここに住むべき」の「べき」は当然の意を表す助動詞「べし」の連体形で、住みつくはずの、の意である。
 結句「身かはと思へど」の「かは」は反語の係助詞で、住むべき身であろうか、いやそうではない、の意である。「ど」は逆接の接続助詞で、倒置によって三句に返る。

わたり:あたりの意と、橋を渡る意の「渡り」とを掛ける
やつはし:三河国の地名、『伊勢物語』の東下りの段で知られる
作者
道因
出典
千載和歌集
前の歌
笛竹のこちくと何に思ひけん 隣におとはせしにぞありける
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つらしとてさてはよもわれやまがらす 頭は白くなる世なりとも