故郷をひとり別るる夕べにも
送るは月の影とこそ聞け
- 歌の意味
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住み慣れた故郷にひとり別れてゆく、命の終わりの夕べにも、見送ってくれるのは月の光だと聞いている。
- 鑑賞
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巻第十九 釈教歌 1222
詞書「百首歌の中に法文の歌に、普賢願の唯此願王不相捨離といへる心を」
百首歌の中の法文の歌で、普賢菩薩の願の、ただこの願王だけは捨て離れない、という句の心を詠んだ歌である。華厳経の普賢行願品には、人が命を終える時、親族も財宝もすべて離れ去るが、普賢の願だけは離れずに付き従い、極楽へ導くと説かれる。故郷をひとり別れる夕べにも、送るのは月の影だと聞いている、と詠み、死出の旅を夕べの別れに、離れずに付き従う普賢の願を月の光にたとえている。
作者の「式子内親王」は後白河天皇の皇女で、賀茂の斎院を務めた。のちに出家し、藤原俊成に和歌を学んだ。
初句「故郷を」の「故郷」は住み慣れた所で、ここではこの世を言う。
二句「ひとり別るる」は、ひとりきりで別れてゆく、の意で、親族も財宝も伴えない死出の旅を言う。
三句「夕べにも」の「夕べ」は、命の終わりの時をたとえている。
四句「送るは月の」の「送る」は見送り付き従う意で、「月」は普賢の願をたとえている。詞書の「不相捨離」を受けている。
結句「影とこそ聞け」の「影」は月の光で、「こそ」は強意の係助詞、已然形の「聞け」で結ぶ。経に説かれているのを聞いている、の意である。
ふげん:普賢菩薩、仏の慈悲と修行の徳を象徴する菩薩
ほふもん:仏の教え、また経文
ぐわんわう:多くの願の中で最もすぐれた願、ここでは普賢の願
- 作者
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式子内親王
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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照らすなる三世の仏の朝日には 降る雪よりも罪や消ゆらん
- 次の歌
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人ごとに変はるは夢の惑ひにて 覚むれば同じ心なりけり