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人ごとに変はるは夢の惑ひにて
覚むれば同じ心なりけり

歌の意味
人それぞれに心が異なって見えるのは、夢の中の迷いであって、目覚めてみれば、みな同じ心であったのだ。
鑑賞
巻第十九 釈教歌 1223

詞書「百首歌詠ませ侍りける時、法文の歌に、五智如来を詠み侍りけるに、平等性智の心を詠み侍りける」
 百首歌を詠ませた折、法文の歌として五智如来を詠んだうち、平等性智の心を詠んだ歌である。人ごとに変わるのは夢の迷いで、覚めれば同じ心であった、と詠む。平等性智は自他の差別を離れてすべてを平等と見る仏の智恵で、人それぞれ心が違うと見えるのは迷いの夢の中のことにすぎず、悟ればみな同じ心であると詠んでいる。
 作者の「摂政前右大臣」は九条兼実である。関白藤原忠通の子で、右大臣を経て摂政となった。日記『玉葉』を残し、慈円の兄、良経の父にあたる。
 本巻の第千二百二十八首と第千二百二十九首は、この兼実家の百首歌の折に詠まれた法文の歌である。

 初句「人ごとに」は、人それぞれに、の意である。
 二句「変はるは夢の」は、心が異なるのは夢の、の意で、迷いの世を夢にたとえている。
 三句「惑ひにて」は、迷いであって、の意である。
 四句「覚むれば同じ」は、夢から覚めると同じ、の意で、悟りを夢から覚めることにたとえている。
 結句「心なりけり」の「けり」は気づきを表す詠嘆の助動詞で、同じ心であったのだ、と悟った心を表している。

ごちによらい:大日如来の五つの智恵を五仏に配したもの
びやうどうしやうち:五智の一つ、自他の差別を離れてすべてを平等と見る智恵
作者
九条兼実
出典
千載和歌集
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