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三笠山さして来にけり石上
古き御幸の跡を尋ねて

歌の意味
三笠山を目指して、やって来たことだ。古い昔の行幸の跡をたずねて。
鑑賞
巻第二十 神祇歌 1256

詞書「後一条院の御時、初めて春日社に行幸ありけるに、一条院の御時の例を思し出でさせ給うて、詠ませ給うける」
 後一条天皇の御代に、初めて春日社への行幸があった折、一条天皇の御代の先例を思い出されて詠まれた歌である。三笠山を目指してやって来た、古い行幸の跡をたずねて、と詠む。春日社は藤原氏の氏神をまつる社で、三笠山のふもとに鎮座する。かつて夫の一条天皇が行った春日行幸の跡を、今わが子後一条天皇の行幸に伴ってたどる感慨を込めている。
 作者の「上東門院」は藤原彰子である。藤原道長の娘で、一条天皇の中宮となり、後一条天皇と後朱雀天皇の母となった。紫式部や和泉式部が仕えたことでも知られる。
 本歌は神祇歌の巻の巻頭の一首である。本巻の第千二百六十首も三笠山を詠み、本歌の「さして」と同歌の「さし初めけん」とが響き合う。巻末の第千二百八十八首が千年の栄えを君の御代に祈って巻を閉じるのに対し、本歌は古い行幸の跡をたずねて巻を開き、先例をしのぶ心と未来への祈りとで巻の始めと終わりが呼応している。

 初句「三笠山」は大和国の春日社の背後にある山で、御蓋山とも書く。本巻の第千二百六十首の四句「三笠の山に」と同じ山である。
 二句「さして来にけり」の「さして」は、目指して、の意の「指して」に、初句の「笠」にちなんで笠を「差して」の意を掛けている。「に」は完了、「けり」は詠嘆の助動詞で、ここで句切れとなる。
 三句「石上」は「古る」にかかる枕詞で、四句の「古き」を導いている。
 四句「古き御幸の」の「御幸」は天皇の外出で、ここでは一条天皇の春日行幸を言う。詞書の「一条院の御時の例」を受けている。
 結句「跡を尋ねて」は、先例をたずねて、の意で、倒置によって二句の来たわけを示している。

さす:目指す意の「指す」と、笠を「差す」意とを掛ける
いそのかみ:「古る」にかかる枕詞
みゆき:天皇や上皇などの外出、行幸
作者
藤原彰子
出典
千載和歌集
前の歌
皆人を渡さむと思ふ心こそ 極楽へ行くしるべなりけれ
次の歌
住吉の波も心を寄せければ むべぞ汀に立ちまさりける