- 歌の意味
-
君の御代を祈るこの願いを、空いっぱいに満たしかなえてください。別雷の神が、まことの神であるならば。
- 鑑賞
-
巻第二十 神祇歌 1273
詞書「賀茂社歌合とて、人々勧めて詠み侍りける時、述懐の歌に詠める」
賀茂社の歌合を人々に勧めて詠ませた折、述懐の歌として詠んだ歌である。君を祈る願いを空に満たしてください、別雷の神が神であるならば、と詠む。賀茂別雷社の祭神である別雷の神は雷の神であり、雷鳴が空に満ちるように、この願いを空いっぱいにかなえてほしいと、神の名にちなんで強く祈っている。結句で「神」を重ねた、迫るような詠みぶりである。
作者の「賀茂重保」は賀茂別雷社の神主で、多くの歌人と交わり、私撰集『月詣和歌集』を編んだ。
前歌の第千二百七十二首に続く賀茂の歌で、次歌の第千二百七十四首は同じ社の後番の歌合の歌である。
初句「君を祈る」は六音の字余りである。「君」は天皇を指し、その御代の長久を祈ることを言う。
二句「願ひを空に」の「空」は雷の神の住むところで、四句の「別雷」と縁がある。
三句「満てたまへ」の「満つ」は満たす意で、「たまへ」は尊敬の補助動詞の命令形である。ここで句切れとなる。
四句「別雷の」は賀茂別雷社の祭神、別雷の神である。
結句「神ならば神」は、神であるならばまことの神として、の意で、「神」を重ねて神の力に強く訴えている。倒置によって三句の願いの前提を示している。
わけいかづち:賀茂別雷社の祭神
みつ:満たす、いっぱいにする
- 作者
-
賀茂重保
- 出典
-
千載和歌集
- 前の歌
-
さりともと頼む心は神さびて 久しくなりぬ賀茂の瑞垣
- 次の歌
-
貴船川玉散る瀬々の岩波に 氷を砕く秋の夜の月