大和物語
人に知られない心の内に燃える火は、煙も立たずに燻っているのです。
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富士の嶺の絶えない思いの火もあるというのに、燻るとは、つれない心であったのだ。
さざ波が絶え間なく岸を洗っているようだ。渚が清らかであれば、君よとどまれということだろうか。
蓬が生えて荒れたこの家を、鶯が人が来ると鳴いている。誰を待てというのだろう。
来てはいるが、言い馴れていないので、鶯があなたに告げよと教えて鳴いているのだ。
あなたのために衣の裾を濡らしながら、春の野に出て摘んだ若菜なのです。
霜や雪の降る古屋の中で、ひとり寝の、うつぶし染めの麻の袈裟である。