大和物語
つかのまでも一緒にいようと約束したのだ。逢っているとは人に見えないものだけれど。
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勝ち負けもないままに果てるのだろうか。あなたゆえに、思いを比べるという比良の山は越えたけれど。
逢うことを互いに恋い慕って、なよ竹のように立ちわずらっていると聞くのが悲しい。
身を投げて逢おうと約束したわけではないけれど、憂き身は水に姿を並べてしまった。
同じ江に住むのはうれしい仲ではあるけれど、どうして私とだけ約束してくれなかったのだろう。
憂きことであった私の水底よ。そもそも、このような約束などなかったならばよかったのに。
私とだけ約束したのではないけれど、同じ江に住むのはうれしい水際だと思う。
ひとりでどうしたらよいのだろうと途方に暮れていると、そうよとでも言うように、前の荻がそよいで答えるのだった。
あなたがいなくてつらいと思うにつけても、いよいよ難波の浦は住みづらい。
悪くはなるまいと思えばこそ人は別れたのでしょう。どうして難波の浦が住みづらいなどと言うのですか。
風が吹けば沖の白波が立つ、その竜田山を、夜半にあなたはひとりで越えているのだろうか。
あの子の寝乱れた髪を、猿沢の池の玉藻として見るのが悲しい。
猿沢の池も薄情なことだ。あの子が玉藻をかぶって沈んだのなら、水も涸れてしまえばよかったのに。
竜田川に紅葉した葉が流れている。神なびのみむろの山に時雨が降っているらしい。
竜田川に紅葉が乱れて流れているようだ。渡ったなら、その錦は途中で断ち切れてしまうだろうか。
言わずに思っていることは、口に出して言うのに勝っている。