古典和歌stream

大和物語

みな人のその香にめづるふぢばかま
君のみためと手折りたる今日

誰もがその香りを賞美する藤袴を、あなたおひとりのためにと手折った今日であることだ。

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大和物語

折る人の心にかよふふぢばかま
むべ色ことににほひたりけり

折った人の心が通っている藤袴だから、なるほど色もことに美しく匂っているのだった。

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大和物語

たがみそぎゆふつけ鳥かからころも
たつたの山にをりはへて泣く

誰の禊のゆふつけ鳥だろうか。唐衣を裁つ、その竜田の山で、長々と鳴き続けている。

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大和物語

たつた川岩根をさしてゆく水の
ゆくへも知らぬわがごとや泣く

竜田川の岩の根をめざして流れていく水のように、行方も知らない私のように泣いているのか。

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大和物語

安積山影さへ見ゆる山の井の
あさくは人を思ふものかは

安積山の影までも映って見える山の井のように、浅い心で人を思うものだろうか。

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大和物語

わがこころなぐさめかねつさらしなや
をばすて山に照る月を見て

私の心は慰めかねてしまった。更級の姥捨山に照る月を見て。

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大和物語

舟もいぬまかぢも見えじ今日よりは
うき世の中をいかでわたらむ

舟も行ってしまった。真楫も見えないだろう。今日からは、この憂き世をどうやって渡っていけばよいのだろう。

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大和物語

我もしかなきてぞ人に恋ひられし
今こそよそに声をのみ聞け

私もそのように鳴いて人に恋われたものだ。今はよそごととして、ただ声を聞くばかりだ。

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大和物語

雲鳥のあやの色をもおもほえず
人をあひ見で年の経ぬれば

雲鳥の綾の色も思い浮かばない。あなたに逢わないまま年が経ってしまったので。

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大和物語

秋萩を色どる風の吹きぬれば
人のこころもうたがはれけり

秋萩を色づける風が吹いたので、あなたの心も疑わしく思われるのだった。

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大和物語

秋の野を色どる風は吹きぬとも
こころはかれじ草葉ならねば

秋の野を色づける風は吹いたとしても、私の心は枯れまい。草葉ではないのだから。

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大和物語

大幣になりぬる人の悲しきは
よるせともなくしかぞなくなる

大幣のようになってしまった人の悲しさは、寄る瀬もなく、そのように泣いているということだ。

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大和物語

ながるともなにとか見えむ手に取りて
引きけむ人ぞ幣と知るらむ

流れていっても、何と見えるだろうか。手に取って引いた人こそが、それを幣と知っているのだろう。

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大和物語

思ひあらばむぐらの宿に寝もしなむ
ひじき物には袖をしつつも

思いがあるのなら、葎の生い茂る粗末な家に寝ることもしよう。敷物には袖を敷いてでも。

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大和物語

大原や小塩の山も今日こそは
神代のことを思ひ出づらめ

大原の小塩の山も、今日こそは神代のことを思い出しているだろう。

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大和物語

忘れ草生ふる野辺とは見るらめど
こは忍ぶなりのちも頼まん

忘れ草の生える野辺とご覧になるでしょうが、これは忍ぶ草なのです。後々も頼みに思いましょう。

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