大和物語
きちんと植えたなら、秋のない時にこそ咲かないだろう。花は散るとしても、根まで枯れることがあろうか。
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菖蒲を刈るのに、あなたは沼で迷っておられたのだ。私は野に出て刈るのがつらい。
することもなくいよいよ心が侘しいのに、今日は見舞わずに過ごしてしまおうとお思いなのか。
最後には行く道だとかねて聞いてはいたが、それが昨日今日のこととは思わなかったのに。
見ないでもなく、見たわけでもない人が恋しいのは、わけもなく今日は物思いに暮れることになるのだろうか。
見たとも見ないとも、誰と知って恋われるのでしょう。おぼつかない今日の物思いですこと。
いえ、着ますまい。人に着馴らさせた狩衣は、わが身に触れればつらい匂いがつくでしょうから。
人の心のつらさを見た。丑三つの今はもう頼みにするまい——夢に見えるかと、寝過ごしてしまったのだ。
人は皆、花の衣になったという。苔の袂よ、せめて乾いてくれ。
限りなく遠い雲居のかなたに別れても、あなたを心に思い送らないことがあろうか。
岩の上に旅寝をするのでたいそう寒い。苔の衣を私に貸してほしい。
世に背いた苔の衣はただ一重。重ねなければ心もとない。さあ二人で寝よう。
折り取れば手に触れて汚れる。立たせたまま、三世の仏に花を奉る。
白雲の宿る峰に取り残されてしまった。思いのほかにある世であったのだ。
青柳の糸ではないけれど、春風が吹けば片方に寄ってしまうわが身であった。
かりそめに吹く風になびいてよいものでしょうか。野分をやり過ごしたあなたではありませんか。