古典和歌stream

大和物語

身を憂しと思ふ心のこりねばや
人をあはれと思ひそむらむ

わが身をつらいと思う心が懲りないからだろうか。また人をいとしいと思い始めてしまうようだ。

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大和物語

ふたり来し道とも見えぬ波のうへを
思ひかけでもかへすめるかな

二人で来た道とも見えない波の上を、思いもかけず帰されることだ。

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大和物語

ありはてぬいのち待つ間のほどばかり
憂きことしげく嘆かずもがな

最後まで保てない命を待つあいだくらいは、つらいことが多くて嘆いたりせずにいたいものだ。

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大和物語

かかる香の秋もかはらずにほひせば
春恋してふながめせましや

このような香りが秋にも変わらず匂うのなら、春が恋しいなどと物思いに沈むこともないだろうに。

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大和物語

思へども甲斐なかるべみしのぶれば
つれなきともや人の見るらむ

思っても甲斐がないだろうと心に秘めていると、薄情な人だと世間は見るのだろうか。

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大和物語

忘れなむと思ふ心の悲しきは
憂きも憂からぬものにぞありける

忘れてしまおうと思う心の悲しさは、つらいことさえつらくなくしてしまうものであった。

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大和物語

わたつみと人や見るらむ逢ふことの
なみだをふさに泣きつめつれば

海だと人は見るのだろうか。逢うことのない涙をたくさん泣き溜めているので。

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大和物語

いつはとはわかねどたえて秋の夜ぞ
身のわびしさは知りまさりける

いつと時期を分けるわけではないが、それでも秋の夜こそ、わが身の侘しさが身にしみて分かるのだった。

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大和物語

かりそめのゆきかひ路とぞ思ひしを
いまはかぎりの門出なりける

かりそめの行き交う道だと思っていたのに、今はこれきりの旅立ちだったのだ。

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大和物語

浜千鳥飛びゆくかぎりありければ
雲たつ山をあはとこそ見れ

浜千鳥は飛んでいける限りがあるので、雲の立つ山を、あれかと遠くから見るばかりです。

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大和物語

いのちだにこころに叶ふものならば
なにか別れの悲しからまし

命さえ思いどおりになるものならば、どうして別れが悲しかろうか。

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大和物語

あさみどりかひある春にあひぬれば
かすみならねどたちのぼりけり

浅緑の芽吹く甲斐のある春に逢えたので、霞ではないけれど、私も立ちのぼったことだ。

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大和物語

すみわびぬわが身投げてむ津の国の
生田の川は名のみなりけり

生きているのがつらくなった。この身を投げてしまおう。津の国の生田の川は、名ばかりであった。

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大和物語

かげとのみ水のしたにてあひ見れど
魂なきからはかひなかりけり

姿ばかりを水の下で見たけれど、魂のない亡骸では甲斐もないことであった。

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大和物語

かぎりなく深くしづめるわが魂は
浮きたる人に見えむものかは

限りなく深く沈んでしまった私の魂は、浮いている人に見えるものだろうか。

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大和物語

いづこにか魂をもとめむわたつみの
ここかしことも思ほえなくに

どこに魂を求めればよいのだろう。広い水の中の、ここともあそこともわからないのに。

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