大和物語
わが身をつらいと思う心が懲りないからだろうか。また人をいとしいと思い始めてしまうようだ。
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二人で来た道とも見えない波の上を、思いもかけず帰されることだ。
最後まで保てない命を待つあいだくらいは、つらいことが多くて嘆いたりせずにいたいものだ。
このような香りが秋にも変わらず匂うのなら、春が恋しいなどと物思いに沈むこともないだろうに。
思っても甲斐がないだろうと心に秘めていると、薄情な人だと世間は見るのだろうか。
忘れてしまおうと思う心の悲しさは、つらいことさえつらくなくしてしまうものであった。
海だと人は見るのだろうか。逢うことのない涙をたくさん泣き溜めているので。
いつと時期を分けるわけではないが、それでも秋の夜こそ、わが身の侘しさが身にしみて分かるのだった。
かりそめの行き交う道だと思っていたのに、今はこれきりの旅立ちだったのだ。
浜千鳥は飛んでいける限りがあるので、雲の立つ山を、あれかと遠くから見るばかりです。
命さえ思いどおりになるものならば、どうして別れが悲しかろうか。
浅緑の芽吹く甲斐のある春に逢えたので、霞ではないけれど、私も立ちのぼったことだ。
生きているのがつらくなった。この身を投げてしまおう。津の国の生田の川は、名ばかりであった。
姿ばかりを水の下で見たけれど、魂のない亡骸では甲斐もないことであった。
限りなく深く沈んでしまった私の魂は、浮いている人に見えるものだろうか。
どこに魂を求めればよいのだろう。広い水の中の、ここともあそこともわからないのに。