古典和歌stream

大和物語

笛竹のひと夜も君と寝ぬ時は
ちぐさの声に音こそ泣かるれ

笛竹の一節ほどのひと夜でも、あなたと寝ない夜は、さまざまな声を上げて泣かずにいられない。

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大和物語

ちぢの音は言葉の吹きか笛竹の
こちくの声も聞えこなくに

さまざまな音は、言葉を吹き鳴らしているだけなのか。笛竹のこちくの声さえ聞こえてこないのに。

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大和物語

あひ見ては別るることのなかりせば
かつがつものは思はざらまし

逢って別れるということがなかったなら、あれこれと物思いをすることもなかっただろうに。

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大和物語

いかなればかつがつものを思ふらむ
名残もなくぞわれは悲しき

どうしてあれこれと物思いができるのだろう。名残もないほどに、私は悲しいというのに。

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大和物語

草の葉にかかれる露の身なればや
心動くに涙おつらむ

草の葉にかかる露のような身であるからだろうか。心が動くだけで涙が落ちるのだろう。

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大和物語

春の野にみどりにはへるさねかづら
わが君ざねと頼むいかにぞ

春の野に緑濃く映えるさねかずら。そのように、あなたを私の第一の人と頼みたいが、いかがでしょうか。

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大和物語

ゆくすゑの宿世も知らずわがむかし
契りしことはおもほゆや君

行く末の宿縁も知らずに、私が昔に約束したことは、今も思い出されますか、あなた。

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大和物語

かささぎのわたせる橋の霜の上を
夜半に踏み分けことさらにこそ

かささぎの渡す橋の霜の上を、夜半に踏み分けて、ことさらにこそ参ったのです。

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大和物語

わが宿のひとむらすすきうらわかみ
むすび時にはまだしかりけり

わが家のひと群れのすすきは、まだ穂先が若いので、結ぶ時期にはまだ早いのだった。

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大和物語

むばたまのわが黒髪は白川の
みづはくむまでなりにけるかな

ぬばたまのように黒かった私の髪は、白川の水を汲むまでの身に成り果ててしまったことだ。

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大和物語

鹿の音はいくらばかりのくれなゐぞ
ふりいづるからに山の染むらむ

鹿の声はどれほどの紅色なのだろう。声を振り出すたびに、山が染まっていくようだ。

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大和物語

わたつみのなかにぞ立てるさを鹿は
秋の山べやそこに見ゆらむ

大海の中に立っている牡鹿よ——秋の山辺が、その底に見えているのだろうか。

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大和物語

人を待つ宿は暗くぞなりにける
契りし月のうちに見えねば

人を待つこの家は暗くなってしまった。約束した月のうちに、あなたが現れないので。

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大和物語

秋風の心やつらき花すすき
吹きくるかたをまづそむくらむ

秋風の心がつれないからだろうか。花すすきは、風の吹いてくる方をまず背くようだ。

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大和物語

春はただ昨日ばかりをうぐひすの
かぎれるごとも鳴かぬ今日かな

春はただ昨日までだと、うぐいすが期限を切ったかのように、鳴かない今日であることだ。

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大和物語

照る月を弓はりとしも言ふことは
山べをさして入ればなりけり

照る月を弓張と言うのは、山辺を狙って射るように沈んでいくからなのだった。

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