大和物語
二人でいた井手の里こそ恋しい。ひとりで折るのはつらい、この山吹の花よ。
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大空も普通ではないことだ。神無月に、私だけがその下で時雨のように泣いていると思うと。
逢うこともない、その波の下の草のように身を隠して、落ち着いた心もなく、声を上げて泣くばかりだ。
袖を貸したわけでもないのに、七夕のあかぬ別れのように、私の袖は濡れてしまったことだ。
秋の夜を待てと期待させたあなたの言葉に、今もかかっている露のはかなさよ。
秋も来ず露も置かないけれど、あなたの言葉は、私にとっては色が変わってしまったのだった。
長いあいだ頼みに思ってきたことだ。この世の中を、袖に涙のかかるこの身のままで。
露が多いので、草のような袂を枕にして、あなたを待つ松虫のように、声を上げて泣くばかりだ。
昔からあなたを思う心はある。荒磯の海の浜の真砂のように、その数も知れない。
やっとのことで惜しみとどめたこの命でもって、逢うことまでもやめようとなさるのか。
一緒にさあ行こうとも言わずに、死出の山を、どうしてひとりで越えようとなさったのか。
暁に鳴く木綿付け鶏のわびしい声に劣らぬ声で、泣きながら帰ったのだ。
暁の寝覚めの耳で聞いていたけれど、鳥のほかの声はしなかった。
遅くも早くも、ついに咲いた梅の花。誰が植えておいた種であるのだろうか。
どうにかしてこのような、年に途切れることもない種がほしい。荒れてゆく庭の頼みとしたいから。
花盛りの春には見に行こう。年切りもしないという種が生えたと聞いたのだから。