古典和歌stream

大和物語

もろともに井手の里こそ恋しけれ
ひとりをり憂き山吹の花

二人でいた井手の里こそ恋しい。ひとりで折るのはつらい、この山吹の花よ。

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大和物語

大空もただならぬかな神無月
われのみ下にしぐると思へば

大空も普通ではないことだ。神無月に、私だけがその下で時雨のように泣いていると思うと。

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大和物語

あふことのなみの下草み隠れて
しづ心なくねこそなかるれ

逢うこともない、その波の下の草のように身を隠して、落ち着いた心もなく、声を上げて泣くばかりだ。

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大和物語

袖をしも貸さざりしかど七夕の
あかぬわかれにひちにけるかな

袖を貸したわけでもないのに、七夕のあかぬ別れのように、私の袖は濡れてしまったことだ。

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大和物語

秋の夜を待てと頼めし言の葉に
今もかかれる露のはかなさ

秋の夜を待てと期待させたあなたの言葉に、今もかかっている露のはかなさよ。

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大和物語

秋もこず露もおかねど言の葉は
我がためにこそ色かはりけれ

秋も来ず露も置かないけれど、あなたの言葉は、私にとっては色が変わってしまったのだった。

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大和物語

長けくも頼みけるかな世の中を
袖になみだのかかる身をもて

長いあいだ頼みに思ってきたことだ。この世の中を、袖に涙のかかるこの身のままで。

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大和物語

露しげみ草のたもとをまくらにて
君まつ虫のねをのみぞなく

露が多いので、草のような袂を枕にして、あなたを待つ松虫のように、声を上げて泣くばかりだ。

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大和物語

むかしより思ふ心はありそ海の
浜のまさごは数も知られず

昔からあなたを思う心はある。荒磯の海の浜の真砂のように、その数も知れない。

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大和物語

からくして惜しみとめたるいのちもて
逢ふことをさへやまむとやする

やっとのことで惜しみとどめたこの命でもって、逢うことまでもやめようとなさるのか。

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大和物語

もろともにいざとは言はで死出の山
などかはひとり越えむとはせし

一緒にさあ行こうとも言わずに、死出の山を、どうしてひとりで越えようとなさったのか。

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大和物語

あかつきは鳴くゆふつけのわび声に
おとらぬ音をぞなきてかへりし

暁に鳴く木綿付け鶏のわびしい声に劣らぬ声で、泣きながら帰ったのだ。

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大和物語

あかつきの寝覚めの耳に聞きしかど
鳥よりほかの声はせざりき

暁の寝覚めの耳で聞いていたけれど、鳥のほかの声はしなかった。

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大和物語

遅くとくつひに咲きける梅の花
たが植ゑおきし種にかあるらむ

遅くも早くも、ついに咲いた梅の花。誰が植えておいた種であるのだろうか。

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大和物語

いかでかく年きりもせぬ種もがな
荒れゆく庭の影と頼まむ

どうにかしてこのような、年に途切れることもない種がほしい。荒れてゆく庭の頼みとしたいから。

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大和物語

花ざかり春は見に来む年きりも
せずといふ種は生ひぬとか聞く

花盛りの春には見に行こう。年切りもしないという種が生えたと聞いたのだから。

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