大和物語
白雲がこちらの方に下りているのは、天の風が吹き寄せてきたからにちがいない。
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何を思っているのか、その心のうちは分からないけれど、泣くのを見るのこそ悲しいことだ。
飽き足りないままに過ごしているからだろう。逢わない夜も逢う夜も、お前をいとしいと思う。
焚きもののように燻る、悔いる心はあったけれど、ひとりではまるで寝られないのだった。
忙しく騒いでいるうちにも物思いはするものらしい。それなら私のこの所在なさを、何にたとえたらよいのだろう。
仮にばかり来るあなたを待つと、声を振り出しては鳴く、その志賀山は、秋こそ悲しい。
隠れ沼の底の下草が身を隠すように、人に知られない恋は苦しいものだった。
身を隠すのに隠れるだけの下草では、長くはあるまいとも思われることだ。
人を早くも飽きるという、津の国の芥川。その名に違わないあなたであったのだ。
来ない人を待つ、その松の葉に降る白雪は、逢えない思いの火に、消え返るばかりだ。
敷き替えもせず、あのままにしてある草枕には、塵ばかりが積もっている。払う人がいないので。
草枕の塵を払うには、唐衣の袂をゆったりと裁つのを待っていてほしい。
唐衣を裁つのを待つあいだにこそ、私の敷妙の塵も積もることでしょう。
狩をする栗駒山の鹿よりも、ひとりで寝る我が身のほうが侘しいのだった。
夜中に出かけても、月さえ見ていなければ、逢っていることを知らぬ顔で言い通せただろうに。
花すすきは、あなたの方にこそ靡いているようです。思いもよらぬ山の方から風は吹きますけれど。