古今和歌集 - よみ人しらず
木々の間から漏れる月の光をみていると、さまざまに物思いをさせる秋が来たことだ。
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あたり一面に秋めいて来るとともに、たちまち我が身の悲しさが思い知らされる
私のためだけに来る秋でもないのに、虫の鳴き声を聞くとすぐに哀しくなってしまう。
何事につけても秋は悲しい季節だ。草木が色づいて美しくなるがそれが終わりなると思われるから。
独り寝をする私の寝床は草葉ではないけれども、秋が来る夜は草葉のようにしっとりと濡れていることだ。
いつと物思いをしない季節はないけれど、秋の夜こそ物思いの極限であることよ
古今和歌集 - 凡河内みつね
夜が明けるのがこれほど惜しいと思う秋の夜を、何もせずむだに寝て明かしてしまう人までも普通でないと思われる。
白雲の浮かぶ空を羽を重ねて飛んで行く雁の数までもはっきり見える秋の夜の月の明るいことよ。
夜が更けて真夜中になったらしい。雁の鳴き声が聞こえてくる空に月が渡ってゆくのが見える。
古今和歌集 - 大江千里
月を見るとあれこれ限りなく悲しい思いが募ってくる。私ひとりの秋ではないのに。
古今和歌集 - みぶのただみね
月にあるという桂の木も、秋になると紅葉するからなのか月の光がより明るく照っているようだ。
古今和歌集 - 在原元方
秋の夜の月の光が明るいので、暗いという名の暗部山も越えてしまえそうだ。
古今和歌集 - 藤原忠房
蟋蟀(きりぎりす)よ、そんなに悲しそうに鳴いてくれるな。秋の夜は長いけれど、同じように長く尽きない思いは、私の方が優っているのだから。
古今和歌集 - 藤原敏行朝臣
秋の夜が明けるのも気づかないで鳴く虫は、私と同様に悲しい思いをしているのだろうか。
秋萩も色づき、私が悲しく夜も眠れないように、コオロギも夜は悲しいのだろうか。
秋の夜は寒く、露はとくに寒いのであろう。露の降りたどの草むらでも虫が辛く思って鳴いているのを聞くと。