更級日記 - 菅原孝標
子をあとに残して来て、私と同じように物思いをしたのだろうか。見るにつけても悲しい、子しのびの森よ。
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更級日記 - 菅原孝標女
子しのびという名を聞くにつけても、私を京に残して行かれた、あの秩父の山の向こうの東路がつらく思われる。
涙までも降りしきるほど、ことさらにあなたのことを思いやっている。嵐が吹いているだろう、冬の山里のあなたを。
更級日記
分け入って訪ねてくださる、そのお心の深さが見えることだ。木陰も暗い夏の茂りを、あのとき分けて来てくださったように。
こうしてまた会える世もあったのに。これが最後だと思ってあなたと別れた、あの秋はいったい何だったのだろう。
思うことがかなわないなどと言って厭うてきた、この命の長さも、今こそうれしく思われる。
思い出して訪ねて来てくれる人はいないけれど、この山里の垣根の荻には、秋風が吹いている。
年は暮れ、夜は明け方になって、その月の光が袖に映っている、そのはかなさよ。
幾千度、水中の田芹を摘んだことだろう。それなのに、願っていたことは露ほどもかなわない。
天の戸を、同じ雲の上にありながらもよそのものとして見て、昔のあとを恋しく思う月であることよ。
月もなく、花も見なかった冬の夜が、どうしてこれほど心にしみて恋しいのだろう。
あの冴えた夜の氷は、私の袖にまだ解けないままで、冬の夜のままのように、声を上げて泣いてばかりいる。
私と同じなのだなあ。水の上の浮き寝で夜を明かしながら、上毛に置いた霜を払いかねているらしい、あの鳥たちは。
まして思ってごらんなさい。水の上の仮の寝の、そのわずかなあいだでさえ、上毛の霜を払いかねていたのですから。
冬枯れの篠原の小薄のように、袖もたるんで力なく、招き寄せることはするまい。風に任せることにしよう。
浅緑の霞に花も一つに溶け合って霞みながら、おぼろに見える春の夜の月。