古典和歌stream

更級日記 - 菅原孝標女

うづもれぬかばねを何にたづねけむ
苔の下には身こそなりけれ

埋もれもせずに残っている屍を、どうして姉は探し求めたのだろう。その姉自身の身こそ、苔の下のものになってしまったのに。

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更級日記 - 菅原孝標女

ふるさとにかくこそ人は帰りけれ
あはれいかなる別れなりけむ

もとの家へ、こうして人は帰っていくものなのだなあ。ああ、あれはいったいどのような別れであったのだろう。

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更級日記 - 菅原孝標女

かき流すあとはつららにとぢてけり
なにを忘れぬかたみとか見む

書き流した筆の跡は氷に閉ざされてしまったのだという。それでは何を、忘れることのない形見と見ればよいのだろうか。

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更級日記

なぐさむるかたもなぎさの浜千鳥
なにかうき世にあともとどめむ

慰めるすべもなく、潟の渚に立つ浜千鳥のようなわたしが、どうしてこの憂き世に跡をとどめていられようか。

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更級日記 - 菅原孝標女

昇りけむ野辺は煙もなかりけむ
いづこをはかとたづねてか見し

煙となって昇っていったであろう野辺には、もうその煙も残っていなかっただろうに、どこを墓と見定めて訪ね当てたのだろうか。

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更級日記

そこはかと知りてゆかねど先に立つ
涙ぞ道のしるべなりける

そこが墓だと確かに知って行ったのではないけれど、先に立ってあふれる涙こそが道案内だったのだ。

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更級日記

住みなれぬ野辺の笹原あとはかも
なくなくいかにたづねわびけむ

人も住み慣れない野辺の笹原には跡形もないのに、泣きながらどんなにか探しあぐねたことだろう。

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更級日記

見しままにもえし煙はつきにしを
いかがたづねし野辺の笹原

見ているそばから、燃える煙は尽きてしまったのに、どうやって訪ね当てたのだろう、あの野辺の笹原を。

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更級日記 - 菅原孝標女

雪降りてまれの人めもたえぬらむ
吉野の山の峰のかけみち

雪が降って、まれにあった人の訪れさえも絶えてしまっているだろう。吉野の山の、峰のかけ道は。

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更級日記

明くる待つ鐘の声にも夢さめて
秋のもも夜の心地せしかな

夜が明けるのを待つうちに聞こえてきた鐘の声にも夢から覚めて、秋の長い夜を百夜も重ねたような心地がしたことだ。

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更級日記 - 菅原孝標女

暁をなにに待ちけむ思ふこと
なるともきかぬ鐘の音ゆゑ

夜明けをどうして待っていたのだろう。願いが成るとも聞かせてくれない、あの鐘の音のせいで。

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更級日記 - 菅原孝標女

たたくともたれかくひなの暮れぬるに
山路を深くたづねてはこむ

戸を叩く音がするといっても、日も暮れてしまったのに、いったい誰が山路を深く分け入って訪ねて来ようか。あれは水鶏なのだ。

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更級日記 - 菅原孝標女

奥山の石間の水をむすびあげて
あかぬものとは今のみや知る

奥山の石の間の水を手にすくい上げて、飽きることのないものだとは、今はじめてお知りになったのか。

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更級日記

山の井のしづくににごる水よりも
こはなほあかぬ心地こそすれ

山の井の、すくった手からしたたる雫で濁るという、あの水よりも、この水のほうがなおさら飽き足りない心地がする。

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更級日記

山のはに入日の影は入りはてて
心ぼそくぞながめやられし

山の端に夕日の光はすっかり沈みきってしまって、心細い思いで、あなたのいる方を眺めやられたことだ。

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更級日記 - 菅原孝標女

たれに見せたれに聞かせむ山里の
このあかつきもをちかへる音も

誰に見せ、誰に聞かせようか。この山里の暁の景色も、繰り返し鳴くほととぎすの声も。

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