古典和歌stream

大和物語

別るれどあひもをしまぬももしきを
見ざらむことのなにか悲しき

別れていくのに、こちらと一緒に別れを惜しんでくれるわけでもないこの宮中を、これから見ることがなくなる——それがどうしてこんなにも悲しいのだろう。

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大和物語

身一つにあらぬばかりをおしなべて
行きめぐりてもなどか見ざらむ

別れるのはお前ひとりの身に限ったことではないのだから、皆が同じように所を移り、めぐりめぐったとしても、どうして再びここを見ることがないだろうか。

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大和物語

ふるさとの旅寝の夢に見えつるは
恨みやすらむまたととはねば

都の人が旅寝の夢に現れたのは、私を恨んでいるからだろうか。あれ以来、また訪ねてもいないので。

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大和物語

千々の色にいそぎし秋は過ぎにけり
今は時雨に何を染めまし

さまざまな色に染める支度で慌ただしかった秋は、もう過ぎてしまった。今となっては、この時雨で何を染めればよいのだろう。

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大和物語

かたかけの舟にや乗れる白浪の
さわぐ時のみ思ひ出づる君

あなたは片方だけ帆を掛けた舟にでも乗っているのだろうか。白波が騒ぎ立つときだけ私を思い出す、そんなあなたよ。

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大和物語

青柳の糸うちはへてのどかなる
春日しもこそ思ひ出でけれ

青柳の糸のような枝が長く垂れて、のどかなこの春の日にこそ、あなたのことが思い出されるのだ。

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大和物語

玉くしげふたとせ逢はぬ君が身を
あけながらやはあらむと思ひし

玉櫛笥の蓋ではないが、二年も逢っていないあなたの身が、まさか緋色のままでいようとは思わなかった。

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大和物語

わびぬれば今はと物を思へども
心に似ぬは涙なりけり

嘆き尽くしてしまったので、もうこれきりにしようと思うのだが、その心に従わないのが涙なのだった。

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大和物語

たぐへやる我が魂をいかにして
はかなき空にもて離るらむ

あなたに添わせて送り出した私の魂を、どうして頼りない空の中で引き離してしまえるだろうか。

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大和物語

逢ふことは今は限りと思へども
涙は絶えぬものにぞありける

逢うことはもうこれきりだと思っているけれど、涙だけは絶えないものであった。

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大和物語

逢ふことの方はさのみぞふたがらむ
ひと夜めぐりの君と思へば

逢うための方角は、そんなふうにいつも塞がっているのだろう。あなたを、一夜めぐりの神のような人だと思うから。

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大和物語

大澤の池の水くき絶えぬとも
なにか恨みむさがのつらさは

大沢の池の水草の茎が絶えたとしても、どうして恨んだりしようか。嵯峨のつれなさなど。

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大和物語

おほかたの秋のはてだに悲しきに
今日はいかでか君くらすらむ

何ということもない普通の秋の終わりでさえ悲しいのに、今日という日をあなたはどのようにして過ごしているのだろう。

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大和物語

あらばこそはじめもはても思ほえめ
今日にも逢はで消えにしものを

生きていてこそ、初めも終わりも思われようが、今日という日に逢うこともなく消えてしまったのだから。

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大和物語

ふるさとをかはと見つつも渡るかな
淵瀬ありとはむべもいひけり

もとの住まいを、あれかと、また川と見ながら渡ることだ。淵と瀬があるとは、なるほどよく言ったものだ。

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大和物語

住の江の松ならなくに久しくも
君と寝ぬ夜のなりにけるかな

住の江の松ではないのに、あなたと共寝をしない夜が、ずいぶんと久しいものになってしまったことだ。

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