大和物語
誠意のないあなたが、ずっと期待させ続けた染革の色の深さを、とうとう見ないままで終わってしまうのだろうか。
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せき止めたわけでもないのに、すっかり絶えてしまった山水のように、誰を偲べといって、この声を聞かせようというのか。
一日中あなたを待つ、その待つ山のほととぎすは、訪れのないときにこそ声を惜しまず鳴くのだ。
あるじもいない僧坊に枯れている松を見ると、千年もの時が過ぎてしまったような気持ちがすることだ。
せめてそれだけでも私を思ってくれることとして、私の家を見たとは言わないでほしい。人が聞くのだから。
今となっては私はどこへ行けばよいのだろう。山にいても、世の中のつらいことはやはり絶えないのか。
もしこの朝霧の中にあの方がいらっしゃるのなら、霧が晴れるにつれてうれしくなるだろうに。
同じことなら、いっそ晴れないでいてほしい。秋霧にまぎれて見えないだけの人だと思っていよう。
女郎花を折る手にかかる白露は、昔のこの日がもう戻らないことを嘆く涙なのだろうか。
沖の風が吹く、その吹井の浦に立つ波の名残にまで、私は沈んでしまうのだろうか。
よそごととして思っていたときよりも、夏の夜の見終わらない夢のほうが、はかないものであった。
いとしいと言ってくれる人があるように、せめて武蔵野の草としてでも生まれてくればよかったのだ。
時雨ばかりが降る山里の木の下は、そこにいる人のせいだろうか、雨が漏れ過ぎていくようだ。
寄りかかるべき木の根もとさえない蔦のようなこの身は、常緑のままであるだけに、秋が悲しい。
美しい色だとは思われなくても、この花を、折にふれてご覧になって私を思い出してほしい。
白雲が幾重にも立つ峰であるから、大内山というのであった。