大和物語
久しいとは思われないけれど、住の江の松は二度目に生え替わったのだろうか。
詳細を見る
夜が明けるというので落ち着いていられない春の夜の夢——そのようなものとして、あなたを夜だけ見ることになるのだろうか。
思ってもみなかった。亡くなった人が悲しいうえに、あなたまでがつれなくなろうとは。
亡くなった人のことをあなたのお耳に入れまいと思って、泣く泣くこらえている、そのあいだを恨まないでほしい。
年が改まるほど時が経ったわけでもないのに、猿沢の池の玉藻を見ることになりそうだ。
物の数にも入らないこの身に置く夜の白玉は、わずかに光を見せるだけのものであった。
春の野は遥かに広いけれど、忘れ草が生えているのは目に見えるものであった。
春の野に忘れ草は生えないだろうと思う。つれない心という種がないのだから。
秋風になびく尾花は、昔見たあなたの袂に似ていて、恋しく思われた。
袂だとして思い出しもしなかっただろう。秋風になびく尾花が驚かせなかったなら。
旧い里として荒れ果ててしまったこの家の草の葉も、あなたのためと思って、まず摘んだのだ。
生きながらえてはいるが恋もしないこの身が、夕方になるとわけもなく物悲しくなるのは、どうしてなのだろう。
夕暮れに物思いをするときは十月であって、私も時雨に劣らないほどだ。
もしも空にある月の身であったなら、行くとも見られないままに、あなたを見ていられただろうに。
柏木の森の下草のように、この身が老いてしまっても、無用のものとして捨て置かないでいてほしい。
柏木の森の下草が老いるような世になっても、そのような思いはあるまいと思う。